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パーシステント・モジュール 📂位相データ分析

パーシステント・モジュール

定義 1

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$R$をとし、拡張された整数集合 $\mathbb{Z}$を$\overline{\mathbb{Z}} := \mathbb{Z} \cup \left\{ \pm \infty \right\}$としよう。

  1. 次のように鎖複体群$\mathsf{C}_{\ast}^{i}$間のチェーンマップchain Map$f^{i} : \mathsf{C}_{\ast}^{i} \to \mathsf{C}_{\ast}^{i+1}$が与えられた場合、$\mathcal{C} := \left\{ \left( \mathsf{C}_{\ast}^{i} , \partial_{i} , f^{i} \right) : i \ge 0 \right\}$を持続複体群persistent Complexと言う。 $$ \mathsf{C}_{\ast}^{0} \overset{f^{0}}{\longrightarrow} \mathsf{C}_{\ast}^{1} \overset{f^{1}}{\longrightarrow} \mathsf{C}_{\ast}^{2} \overset{f^{2}}{\longrightarrow} \cdots $$
  2. $R$-モジュール $M^{i}$間のホモモルフィズム $\varphi^{i} : M^{i} \to M^{i+1}$が与えられた場合、$\mathcal{M} := \left\{ \left( M^{i} , \varphi^{i} \right) : i \ge 0 \right\}$を持続モジュールpersistent Moduleと言う。
  3. 持続複体群$\mathcal{C}$や持続モジュール$\mathcal{M}$の各コンポーネント$\mathsf{C}_{\ast}^{i}$や$M^{i}$が、$R$-モジュール有限生成であり、ある$m \in \mathbb{Z}$に対して全ての$f^{i}$や$\varphi^{i}$が$i \ge m$で同型である場合、$\mathcal{C}$や$\mathcal{M}$を有限型と言う。
  4. $0 \le i \le j \in \overline{Z}$を満たす区間$(i,j)$を$\mathcal{P}$-インターバルp-intervalと言う。

説明

これは何の馬鹿げた定義だ?

これらの定義はゾモロディアンzomorodianの論文から引用したもので、見ての通り、三つの定義は関係がなさそうだ。彼の論文を読んでいると、この部分が一番問題だった。こういった定義が次々に紹介されるので、何か関係があるはずなのに、どうしてもただの定義同士に関係が見えない。持続複体群は「持続」と全く関係がなく、$\mathcal{P}$-インターバルには$\mathcal{P}$が出てこない。さらに言えば、持続モジュールは「モジュール」ではなく「モジュールのファミリー」なのに、単にモジュールと呼ばれている。

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これら自体の意味にこだわると、純度100%の精神病になる。誰かが「実際には全く関係がない」と一言教えてくれれば、もっと時間を節約して、快適に学習できただろう。定義はそのまま受け入れて、実際に重要な議論に移ろう。

トポロジカルデータ解析

基本的にトポロジカルデータ解析topological Data Analysisでは、フィルター付き複体群でどのようにいくつかのトポロジカルな性質が持続性persistencyを持つかに興味を持つ。例えば、ビエトリス-リプス複体群で半径$\varepsilon > 0$を増やしながらさまざまな複体群を列挙してフィルター付き複体群を作れば、その結果の変化がまさに$f^{i}$で表されることになる。$\partial_{p}$はフィルター付き複体群に関係なく、各複体群に伴うべき境界マップなので、この文脈では気にする必要がない。これは、TDAの直感的なプロセスを数学的表現に移したものであり、持続モジュールは特に取り扱いやすい条件を満たせるようにした持続複体群の中でも$\mathsf{C}_{\ast}^{i} = M^{i}$であり$f^{i} = \varphi^{i}$である場合を想定しているのだ。この文脈を理解すれば、そういった定義の紹介もそんなに変ではない。問題は、そういった良い条件を与えられた持続モジュール$\mathcal{M}$もまだ扱いづらいということだが、ここでグレードモジュールが彗星のように現れる。

$\mathcal{M}$が$R$上での持続モジュールであるとき、$R[t]$の文脈で $$ \alpha \left( \mathcal{M} \right) := \bigoplus_{i=0}^{\infty} M^{i} $$ 群作用を $$ t \cdot \left( m^{0} , m^{1} , m^{2} , \cdots \right) = \left( 0, \varphi^{0} \left( m^{0} \right) , \varphi^{1} \left( m^{1} \right) , \varphi^{2} \left( m^{2} \right) , \cdots \right) $$ 与えることができる。つまり、$t$が作用するとか、かけられるというのは、$M^{i}$から$M^{i+1}$に要素を昇格させるということだ。この対応関係$\alpha$は、次の定理に従って、持続モジュールの問題をグレードモジュールの問題に移す。

可換代数学のアーティン-リース理論: 対応関係$\alpha$は、$R$上の有限型持続ホモロジーのカテゴリと$R[t]$上の有限生成標準グレードモジュールのカテゴリとの間のカテゴリ同等性を定義する。

グレードモジュールは、言葉が少し複雑だが、我々が学部時代によく扱った多項式環に過ぎないかもしれず、それよりもさらにシンプルな形であるかもしれない。これらの構築を受け入れることができれば、もはや抽象的な代数トポロジーを超えて、ホモロジーというものを計算するアルゴリズムの領域に進む準備ができたということだ。 $$ Q (i,j) := \sum^{i} F[t] / \left( t^{j-i} \right) $$ 我々は、$F$に対してグレード環でありPIDである$F[t]$を$\mathcal{P}$-インターバル群$\mathcal{S}$と次のような全射$Q$で関連付けることになる。直感的な例を想像してみると、我々のデータが$\varepsilon_{5} = 0.6$から$\varepsilon_{12} = 1.5$までの$1$番目のベッチ数が$\beta_{1} = 2$だった場合、次のような関係を見つけたことになる。 $$ Q (5,12) = \sum^{i} F[t] / \left( t^{12-5} \right) $$ そして、ベッチ数で説明されるトポロジカルな性質が持続された期間は$1.5 - 0.6 = 0.9$である。明示的ではないが、この話を聞いてみれば、持続複体群などになぜ「持続」persistentという表現がつけられたのか、少しは共感できるようになるだろう。


  1. Zomorodian. (2005). Computing Persistent Homology: ch3 ↩︎