計算トポロジーにおける境界行列
📂位相データ分析計算トポロジーにおける境界行列
説明
定義では単体複合体について述べられているが、以下の説明で抽象単体複合体のみ言及される理由は、境界行列について調べたかっただけの人の視点で見ると、単体複合体の抽象化があまりに過剰だからだ。概念的には、どちらの定義を受け入れても全く問題なく、抽象単体複合体の方が想像しやすく、計算しやすい。
例
K={{1},{2},{3},{4},{1,2},{2,3},{3,1},{1,4},{1,2,3}}
定義だけを見ても境界行列が何かわかるわけがなく、例を一つ見ればすぐに感覚がつかめる。例えば、このような抽象単体複合体Kが与えられているとしたら、p=2番目の境界行列は
∂2=122331141231110
で、p=1番目の境界行列は
∂1=1234122331141100011010101001
である。∂pはnp×np−1サイズの行列で、もう少し直感的に言うと、行に(p−1)-単体を、列にp-単体を並べ、その包含関係に応じて1または0で成分を与えられたブーリアンboolean行列だ。
意味
抽象化に問題がないなら、ホモロジーについてある程度理解しているとして、以下の説明を読んでみよう。
境界行列の定義自体は単純だが、実際に持つ意味や用途はそれよりはるかに深く、多岐にわたる。抽象単体複合体Kによって構成される単体ホモロジー群を考えた時、成分の値自体を離れて、その中にある意味自体が、その境界ホモモルフィズム∂pがp-チェインを(p−1)次元に送ること、つまりホモモルフィズムの変数置換を表した行列だ。