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抽象代数学における自由群 📂位相データ分析

抽象代数学における自由群

定義 1

  1. インデックス集合 II \ne \emptyset に対して、集合 A:={ai:iI}A := \left\{ a_{i} : i \in I \right\}アルファベットalphabetと呼び、その要素 aiAa_{i} \in Aレターletterとしよう。
  2. 整数 nZn \in \mathbb{Z} に対して、aina_{i}^{n} のような形を 音節syllableと言い、これらの有限な並べ替えjuxtapostionである文字列 ww単語wordとする。
  3. 音節 ainaima_{i}^{n} a_{i}^{m} は、ain+ma_{i}^{n+m} のように表現でき、これを 初等縮約elementary contractionと言う。これ以上初等縮約できない単語を 縮約語reduced wordとし、特に 1:=ai01 := a_{i}^{0}空単語empty wordとする。
  4. アルファベット AA のレターで作れる全ての縮約語の集合を F[A]F [A] としよう。二つの単語 w1,w2F[A]w_{1} , w_{2} \in F[A] に対して、w1w2w_{1} \cdot w_{2} が縮約語形で表される 二項演算 :F[A]2F[A]\cdot : F[A]^{2} \to F[A] を定義する。 (F[A],)\left( F[A], \cdot \right)AA によって生成されたフリーグループfree group generated by AAと呼ぶ。
  5. GG が集合 A:={ai:iI}A := \left\{ a_{i} : i \in I \right\} の要素を 生成元として持つ群であり、ϕ(ai)=ai\phi \left( a_{i} \right) = a_{i}同型 ϕ:GF[A]\phi : G \to F [A] が存在するなら、GGAA 上でフリーfree on AAであると言い、aia_{i}GGフリージェネレーターfree Generatorと呼ぶ。
  6. AA \ne \emptyset 上でフリーな群を フリーグループfree groupと定義し、AA濃度 A|A| をフリーグループの ランクrankと呼ぶ。

説明

定義が長くて読むのが嫌になるかもしれないけど、実際に例を考えてみると全然難しくない。‘アルファベット’や’単語’のような用語が出てくる点に戸惑わないでほしい。代数学代數学という言葉自体が「数を代わりに文字を使うことについての勉強」という意味だからだ。ここまで来て考えてみれば、集合に演算を加えて考えるというアプローチがあまりにも抽象的だったかもしれない。実際、フリーグループについて定義が終わった後は、上で出てきた単語はほとんど使わない。心配せずに例を見てみよう。

アルファベットとレター

A={a,b} A = \left\{ a, b \right\}

上のような アルファベットを考えると、レターはただの aabb だけだ。

音節と単語

アルファベット AA に対して a2,b3,b1 a^{2} , b^{3}, b^{-1} は全て 音節だ。これらを有限に、重複を許して並べるという意味で、並べ替えjuxtapostionという表現が使われ、定義としては、ただ 単語と言った。 a2bbbabb2aaa2ba24 a^{2} b \\ bbab \\ b^{-2} a a a^{-2} b a^{-24}

縮約語と空単語

例として、最後の単語 b2aaa2ba24b^{-2} a a a^{-2} b a^{-24} が縮約される過程を見てみよう。 b2aaa2ba24=b2a2a2ba24=b2a0ba24=b21ba24=b2ba24=b1a24 \begin{align*} & b^{-2} a a a^{-2} b a^{-24} \\ =& b^{-2} a^{2} a^{-2} b a^{-24} \\ =& b^{-2} a^{0} b a^{-24} \\ =& b^{-2} 1 b a^{-24} \\ =& b^{-2} b a^{-24} \\ =& b^{-1} a^{-24} \end{align*} ここで a0=1a^{0} = 1 はまるで 単位元のように機能しており、実際にも音節がないという意味でEmpty Wordと呼ばれる。になった後は特に 11 をアルファベットで書く必要はない。

AA によって生成されたフリーグループ

ここまでのビルドアップから、(F[A],)\left( F[A], \cdot \right) は自然に になる。単位元は空単語 11 であり、全ての単語 ww に対して、次を満たす 逆元 w1w^{-1} が存在する。 ww1=w1w=1 w \cdot w^{-1} = w^{-1}\cdot w = 1 最初から F[A]F[A] は具体的な単位元と逆元を与えられていたので、当然群だ。このようにフリーグループとは他でもない「群になるために作られた群」だ。

AA 上でフリーな群

F[A]={,a2b1,a1b1,a1,b1,1,a,b,ab,aba} F[A] = \left\{ \cdots , a^{-2} b^{-1} , a^{-1} b^{-1}, a^{-1}, b^{-1} , 1 , a , b , ab , a b a \cdots \right\} F[A]F[A] の要素を具体的に並べてみると上のようだ。ここまでの定義はもちろん直感的で理解しやすいけど、実際には GG そのものに興味がある。例えば、整数群 (Z,+)\left( \mathbb{Z} , + \right) を考えると、{1}\left\{ 1 \right\} の要素を 生成元として持つ巡回群であり、F[{a}]F \left[ \left\{ a \right\} \right] と同型なので、{a}\left\{ a \right\} 上でフリーであると言える。

フリーグループとランク

ここまでの例から、Z\mathbb{Z}単元素集合 {a}\left\{ a \right\} 上でフリーなのでランク 11 であり、A={a,b}A = \left\{ a,b \right\} によって生成されたフリーグループ F[A]F[A] はランク 22 だ。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p341~342. ↩︎