モレラの定理の証明
📂複素解析モレラの定理の証明
定理
複素関数 f:C→C が 単連結領域 R 内で 連続であり、R に含まれる全ての 閉路 C⊂R に対して ∫Cf(z)dz=0 を満たす場合、f は R 内で 解析的である。
説明
コーシーの定理の逆と考えることができるだろう。興味深いことに、通常「微分可能なら連続、連続なら積分可能」と解析学の常識ではあるが、モレラの定理はかえって積分を通じて関数の微分可能性を判断しており、非常に驚くべき定理である。
証明
F(z):=∫z0zf(w)dw
固定された点 z0∈R から任意の点 z∈R までの f の 複素路線積分を上記のように z∈R に対する関数として定義しよう。まず、これがきちんと定義されるかwell-definedを見てみよう。全ての 閉路 C で ∫Cf(z)dz=0 と仮定した前提により、どんなパス w0:z→z0 を固定しても
∫z0zf(w)dw+∫w0f(u)du=0
F(z) が z0 から z までどんなパスで積分しても常に同じ値を持つことがわかる。これにより、F は唯一 z の選択によって値が一つに決まる関数であることを確認した。
複素路線積分の基本性質に従えば hF(z+h)−F(z)=h1∫zz+hf(w)dw であるから
===hF(z+h)−F(z)−f(z)h1∫zz+hf(w)dw−h1hf(z)h1∫zz+hf(w)dw−h1∫zz+hf(z)dwh1∫zz+h(f(w)−f(z))dw
である。ここで、f が連続であるとしたので、与えられた ε>0 に対して
∣h∣<δ⟹∣f(z+h)−f(z)∣<ε
を満たす δ が存在する。
ML補題: ∣f(z)∣≤M を満たす正数 M と C の長さ &VariableDoubleVerticalBar;C&VariableDoubleVerticalBar; に対して
∫Cf(z)dz≤ML
ML補題により
hF(z+h)−F(z)−f(z)=∣h∣1∫zz+h(f(w)−f(z))dw<∣h∣1ε∣h∣=ε
従って
f(z)=h→0limhF(z+h)−F(z)=F′(z)
である。すなわち、f はある関数 F の導関数である。複素解析では、一度微分可能なら無限回微分可能であるので、F が微分可能であれば、f も微分可能である。
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