m2 空間
定義 1 2
確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ が与えられているとする。
- $\mathcal{F}$ のサブシグマフィールドのシーケンス $\left\{ \mathcal{F}_{t} \right\}_{t \ge 0}$ が以下を満たすとき、フィルトレーションfiltrationと呼ぶ。 $$ \forall s < t, \mathcal{F}_{s} \subset \mathcal{F}_{t} $$
- 確率過程 $g(t,\omega) : [0,\infty) \times \Omega \to \mathbb{R}^{n}$ がすべての $t \ge 0$ で $\omega \mapsto g (t,\omega)$ が $\mathcal{F}_{t}$-可測であれば $\mathcal{F}_{t}$-適応$\mathcal{F}_t$-Adaptedという。
- 区間 $I := [a,b]$ について、以下の三つの条件を満たす関数たちの集まりを $m^{2} = m^{2} [a,b]$ と表示する。特にこの $I$ を伊藤積分のナチュラルドメインnatural Domainと呼ぶ。
- (i): $\mathcal{B}$ が $[0, \infty)$ のボレルシグマフィールドに対して$(t, \omega) \mapsto f(t, \omega)$ が $\mathcal{B} \times \mathcal{F}$-可測である。
- (ii): $f (t,\omega)$ が $\mathcal{F}_{t}$-適応である。
- (iii): ヒルベルト空間の構造である。つまり、 $$ \left\| f \right\|_{2}^{2} \left( [a,b] \right) = E \left( \int_{a}^{b} \left| f(t,\omega) \right|^{2} dt \right) < \infty $$
- $\mathcal{F}_{t}$ が $\mathcal{F}$ のサブシグマフィールドであることは、両方が $\Omega$ のシグマフィールドであるが、$\mathcal{F}_{t} \subset \mathcal{F}$ であることを意味する。
- $f$ が $\mathcal{F}_{t}$-可測関数であることは、すべてのボレルセット $B \in \mathcal{B}([0,\infty))$ に対して $f^{-1} (B) \in \mathcal{F}_{t}$ であるという意味だ。
説明
フィルトレーションが与えられた場合、確率過程 $f$ が $\mathcal{F}_{t}$-可測であることは、時点 $t$ までの歴史や情報を持っているとも見なすことができる。フィルトレーションは、時間とともに情報が増えるという概念と一致する、より大きなサブシグマフィールドのシーケンスだ。
$m^{2}$ 空間という命名は、条件(iii)で見るように、$L^{2}$ 空間から来ているのは自然なことだ。