フレネ-セレの公式: 曲率, 接線, 法線, 従法線, ねじれ
定義 1
$\alpha$を単位速度カーブだとしよう。
- 接線 $T(s) = \alpha^{\prime} (s)$ のスピード$\kappa (s) := \left| T^{\prime}(s) \right|$ を$\alpha (s)$の曲率と言う。
- $\alpha$の接線の速度$T^{\prime}(s)$を曲率$\kappa (s)$で割った関数、つまり次のように定義された$N$を法線ベクトル場と言う。 $$ N(s) := {{ T^{\prime}(s) } \over { \left| T^{\prime}(s) \right| }} = {{ T^{\prime}(s) } \over { \kappa (s) }},\qquad \kappa (s) \ne 0 $$
- 次のように定義された$B$を従法線ベクトル場と言う。 $$ B(s) := T(s) \times N(s) $$
- 次のように定義されたスカラー関数$\tau$をねじれと言う。 $$ \tau (s) := - \left< B^{\prime}(s) , N (s) \right> $$
- 接線、法線、従法線、曲率、ねじれを集めた集合をフレネ・セレの装置と言う。 $$ \left\{ T(s), N(s), B(s), \kappa (s), \tau (s) \right\} $$
説明
- 定義でのスピードの細かい違いに縛られることなく、混乱したらスピードと覚えておくほうがいい。
- 特に直交集合$\left\{ T(s), N(s), B(s) \right\}$をフレネ・セレフレームと言う。
- 定義では$\alpha$が単位速度カーブだが、簡単に一般化することができる。
曲率
原書を読む人にとっては[曲率]の発音が慣れているが、書くときには曲率とするのが自然だ。
式で曲率は単に接線(接線、方向)が変わる量を示す。曲線で方向が変わる量が大きいということは、それ自体で曲線がどれだけ曲がっているかを示しているので、有効な定義と言えるだろう。当然だが、$\kappa (s) = 0$ならば曲線は直線である。
$\alpha$が単位速度でない場合の定義は次の通りである。
$$ \begin{equation} \kappa (t) := \dfrac{\left| T^{\prime}(t) \right|}{\left| \alpha^{\prime}(t) \right|} \end{equation} $$
法線
通常、Normalは「規則正しい」と訳されないが、「垂直」と自然化される。法線もそうだが、従法線と一緒に考えると、これはあまり良い訳ではないと思われる。幾何学の文脈で、Normalを「垂直」と理解するほうが精神衛生上良い。この意味で、「法線」であることは、何かに「垂直」であると受け取ることができる。
法線ベクトルは定義上、その大きさが常に$1$に固定されており、$\alpha^{\prime} = T$であるため、$N$は$\alpha$の二階導関数に相当する。$B^{\prime} = T^{\prime} \times N + T \times N^{\prime}$まで考慮すると、フレネ・セレの装置を扱うためには、$\alpha$は少なくとも三回微分可能でなければならないことがわかる。
主単位法線ベクトルとも言う。
従法線
従法線は「従垂直」と自然化されているが、法線に従うからという名前が付けられたようだ。上で述べた「法線」の感じに従えば、Bi(2、2つ)が付けられたBi-normalは、接線と法線「両方に垂直」の感じになる。
これは式で見るとさらに明確になる。接線と法線の外積として定義そのものなので、その名前から接線、法線に垂直であれと決め付けられた感じがする。
ねじれ
Torsionは漢字訳なしで「ねじれ」と自然化され、日本語でさえ[ねじれ]捩れ2とひらがなが混ざっている。Torsionのその意味を生かした訳が全部あやふやで、「ねじれ」という言葉自体も学術的な用語としては多少不適切な感じがあるため、英語の発音そのまま[トーション]と呼ぶのが一番楽だろう。
マイナス$-$が付くか付かないかはそれほど重要ではなく、ただの慣習だ。
式だけを見た場合、ねじれがなぜこのように定義されたのか全く理解できないが、もっと勉強すれば式で納得できるかもしれない。とりあえずは「このように定義すると式が綺麗になるから」と納得して進むことができるが、これが幾何学を学ぶ上での良い態度であるとは言い難い。無理やりでも直感的に納得しよう。
$\alpha (s)$に従えば、$B(s)$に垂直な平面を接平面3と言うが、$B$が定数、つまり同じであれば、曲線$\alpha$の接平面も変わらず、$\mathbb{R}^{3}$のような平面に配置されることになる。
一方、先に述べたように、法線ベクトルのスピードは常に$|N| = \left| T^{\prime} / \left| T^{\prime} \right| \right| = 1$であるため、ねじれ$\tau$の大きさは$B^{\prime}$の大きさに比例する。これを上の接平面と結びつけて考えると、ねじれの大きさ$\left| - \left< B^{\prime}(s) , N (s) \right> \right|$は「曲線が接平面からどれだけ外れようとしているか」の尺度になるだろう。先に言ったように、$B$が定数であれば、$B^{\prime} = 0$であると、この曲線は自分が配置されている(接)平面から外れることを全く考えていないことになる。
物理的な意味4
曲線$\alpha$は物理学で位置と見なすことができる。$\alpha^{\prime}$が速度と呼ばれるのは、$\alpha$の変数を時間、関数値を位置と考えるためで、実際にはこのような概念が微分幾何学での曲線として数学的に抽象化されたものだ。では、ある物体が曲線$\alpha$に沿って運動しているとしよう。物理学では、位置は$\mathbf{r}$と表される。
$$ \alpha (t) = \mathbf{r}(t) $$
速度は位置の微分であるため、$\mathbf{v} = \dfrac{d \mathbf{r}}{dt} = \dfrac{d \alpha}{d t}$が得られる。接線の定義により、$T = \dfrac{\alpha^{\prime}}{\left| \alpha^{\prime} \right|} = \dfrac{\mathbf{v}}{v}$となる。
$$ \mathbf{v} = v T $$
今、両辺を$t$で微分してみよう。速度の微分は加速度であるので、
$$ \mathbf{a} = \dfrac{d \mathbf{v}}{dt} = v^{\prime} T + v T^{\prime} $$
このとき、$(1)$により次のように得られる。
$$ \kappa = \dfrac{\left| T^{\prime} \right|}{\left| \mathbf{r}^{\prime} \right|} = \dfrac{\left| T^{\prime} \right|}{v} \implies \left| T^{\prime} \right| = v\kappa $$
法線の定義により、次のように得られる。
$$ N = \dfrac{T^{\prime}}{\left| T^{\prime} \right|} = \dfrac{T^{\prime}}{v\kappa} \implies T^{\prime} = v\kappa N $$
したがって、加速度は次のように表される。
$$ \mathbf{a} = v^{\prime}T + v^{2}\kappa N $$
これにより、加速度は接平面にあるベクトルであり、$T$と$N$の線形結合として表されることがわかる。
Millman. (1977). Differential Geometryの要素: p24~26. ↩︎
https://ja.wikipedia.org/wiki/捩れ_(代数学) ↩︎
Millman. (1977). Differential Geometryの要素: p31。 ↩︎
James Stewart, Daniel Clegg, and Saleem Watson, Calculus (early transcendentals, 9E), p874-875 ↩︎