ラオ-ブラックウェル-コルモゴロフ定理
📂数理統計学ラオ-ブラックウェル-コルモゴロフ定理
要旨
正則条件:
- (R0):確率密度関数fはθに対して単射である。数式で表せば次を満たす。
θ=θ′⟹f(xk;θ)=f(xk;θ′)
- (R1):確率密度関数fは全てのθに対して同じサポートを持つ。
- (R2):真値θ0はΩの内点interior pointである。
- (R3):確率密度関数fはθに対して2回微分可能である。
- (R4):積分∫f(x;θ)dxは積分記号の中でθに対して2回微分可能である。
パラメーターθに対して確率密度関数がf(x;θ)のランダムサンプルX1,⋯,Xnが与えられ、正則条件(R0)〜(R4)を満たすとする。統計量Y:=u(X1,⋯,Xn)がE(Y)=k(θ)であれば
Var(Y)≥nI(θ)[k’(θ)]2
このとき右辺のnI(θ)[k’(θ)]2をラオ-クレーマー下限rao-Cramér Lower Boundと呼ぶ。
- nI(θ)はサイズnのランダムサンプルのフィッシャー情報である。
証明
連続型の場合の証明だが、離散型でも大差ない。
k(θ)=E(Y)を積分形で書き下すと
k(θ)=∫R⋯∫Ru(x1,⋯,xn)f(x1;θ)⋯f(xn;θ)dx1⋯dxn
両辺をθで微分すると、fをθの関数としてみると、ログ関数の微分法からlogg=gg′となるので
k’(θ)===∫R⋯∫Ru(x1,⋯,xn)[k=1∑nf(xk;θ)1∂θ∂f(xk;θ)]×f(x1;θ)⋯f(xn;θ)dx1⋯dxn∫R⋯∫Ru(x1,⋯,xn)[k=1∑nff′]×f(x1;θ)⋯f(xn;θ)dx1⋯dxn∫R⋯∫Ru(x1,⋯,xn)[k=1∑n∂θ∂logf(xk;θ)]×f(x1;θ)⋯f(xn;θ)dx1⋯dxn
新しい確率変数Z:=k=1∑n∂θ∂logf(xk;θ)を定義すると、上記の式は次のようにすっきりと整理される。
k’(θ)=E(YZ)
バートレットの第一同一式:
E[∂θ∂logf(X;θ)]=0
フィッシャー情報の分散形:
Var(∂θ∂logL(θ;X))=nI(θ)
ここで、Zはスコア関数の和を表すので、バートレットの同一式とフィッシャー情報の分散形により
E(Z)=Var(Z)=0nI(θ)
k’(θ)を共分散形で解くと、Y,Zの標準偏差とピアソン相関係数ρについて
k’(θ)===E(YZ)E(Y)E(Z)+ρσYσZE(Y)⋅0+ρσYnI(θ)
両辺を二乗してρ2について整理すると
σY2nI(θ)[k’(θ)]2≤ρ2
ρ2≤1であり、両辺にσY2=Var(Y)を掛けると
nI(θ)[k’(θ)]2≤Var(Y)
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付随する結果
もしk(θ)=θ、つまりYが不偏推定量であれば
⟹⟹k(θ)=θk’(θ)=1[k’(θ)]2=1
それによって
Var(Y)≥nI(θ)1