エイズ伝播モデル
📂動力学エイズ伝播モデル
概要
エイズAIDS、いわゆる後天性免疫不全症候群は、HIVというウイルスによって引き起こされる疾患で、何十年も人類を悩ませてきた感染症だ。エイズの伝播経路には、同性愛、異性愛、薬物使用などがあり、その数学的モデリングは必然的に全人口の構造を含むことになる。しかし、まずは最も単純なカスティーリョCastillo、カベスChavezなどによって紹介されたODEモデルを紹介する。
モデル
T(t)=dtdS=dtdI=dtdY=dtdA=dtdZ=S(t)+I(t)+Y(t)−μS+Λ−λTC(T)(I+Y)S−μI+pλTC(T)(I+Y)S−kII−μY+(1−p)λTC(T)(I+Y)S−kYY−(μ+δ)A+kII−μZ+kYY
変数
- S(t): tの時点でエイズに感染する可能性がある個体数を表す。
- I(t): tの時点でエイズを伝染させうる集団のうち、特に重症化している個体数を表す。
- Y(t): tの時点でエイズを伝染させうる集団のうち、特に軽症化している個体数を表す。
- A(t): tの時点で重症のエイズに進行した個体数を表す。
- Z(t): tの時点で軽症のエイズに進行した個体数を表す。
- T(t): tの時点で実際にエイズ伝播に関与している個体数を表す。
関数
- C(T): 単位時間ごとに個々の人が持つ性的パートナー数の平均である。
パラメータ
- Λ>0: 移住、出生を含む人口流入量で、特に一定である必要はない。
- λ>0: エイズの伝播率である。
- p∈[0,1]: 感染時に重症化する割合である。(1−p)は自然に軽症化する割合となる。
- kI,kY>0: 感染者が無症状期を経て症状期に達する割合である。
- μ>0: エイズに関係ない基本的な死亡率である。
- δ>0: エイズによる死亡率である。
説明
エイズの特徴の一つは、治療が難しく、非常に長い無症状期を持つ慢性疾患であることだ。最初に風邪のような症状を経験した後、通常8~10年間は症状がなく、その間にも体内のHIVは増殖し続け、エイズに進行する。もちろん、この時点で、症状が現れる前に法律で日常活動に制限がかかることもある。
数学的モデルでは、A,Zがもう性的活動を行わないという仮定を設けている。したがって抽象的には、一般的なSIRモデルのR(t)と区別されないが、重症と軽症に分け、その死亡率に差を設けているだけである。方程式では、特にAの死亡率が高いと反映されている。
改善
パラメータkI,kYは、エイズの進行量を表す意味で、この期間が人によって大きく異なるため、現実性が低いとしてモデルを改善しよう。無症状期間を滞在期間sojourn Timeと呼ぶ場合、この滞在時間は’HIVがエイズに進行するまでの生存時間’として、生存関数を導入して反映することができる。
生存関数: P(0)=1であり、減少しない関数P:[0,∞)→[0,∞)を生存関数と定義する。
もし
∫0∞P(s)dx=τ<∞
とすると、このτは平均滞在期間を意味する。確率密度関数 f(s)が与えられた場合にはf(s)=−dP(s)/dsのように生存関数を定義することができるので、滞在期間に従うさまざまな分布を考えることができる。特にガンマ分布やワイブル分布が広く使用される。これにより、上述のモデルではI、Yがある生存関数PI,PYを導入して以下のように変更されることができる。
I(t)=Y(t)=I0+p∫0tλTC(T)(I+Y)Se−μ(t−s)PI(t−s)dsY0+(1−p)∫0tλTC(T)(I+Y)Se−μ(t−s)PY(t−s)ds