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疑似逆行列 📂行列代数

疑似逆行列

概観

擬逆行列pseudoinvers matrixは、行と列のサイズが同じでない、正方行列でない行列$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$に対して、‘実質的に’逆行列となる行列を意味する逆行列の一般化である。行列変換$T_{A} : \mathcal{N} (A) \to \mathcal{C} (A)$がすべての$\mathbf{x} \in \mathcal{N} (A)^{\perp}$に対して $$ T_{A} \mathbf{x} = A \mathbf{x} $$ を満たすならば、$T_{A}$は全単射になる。これは$T_{A}$の値域を狭めて強制的に全射surjectionにすることとみなすことができ、逆変換$T_{A}^{-1} : \mathcal{C} (A) \to \mathcal{N} (A)$が存在し、これを通じて擬逆行列を定義することができる。

定義1

行列$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$と行列変換$T_{A} : \mathcal{N} (A) \to \mathcal{C} (A)$が与えられたとする。すべてのベクトル$\mathbf{y} = \mathbf{y}_{1} + \mathbf{y}_{2} \in \mathbb{R}^{m}$に対して行列$A^{\dagger}$が次を満たすならば、$A^{\dagger}$を$A$のムーア-ペンローズmoore-Penrose擬逆行列と呼ぶ。 $$ A^{\dagger} \mathbf{y} = T_{A}^{-1} \mathbf{y}_{1} $$


  • $\mathbf{y}_{1} \in \mathcal{C}(A)$であり、$\mathbf{y}_{2} \in \mathcal{C}(A)^{\perp}$である。
  • $\dagger$は、下向きのダガーの形をした記号で、実際にダガーdaggerと読む。数理物理学では随伴転置行列を表すこともあるが、文脈をよく読めば混乱はないだろう。

定理

行列$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$の擬逆行列は、次のように計算される。 $$ \begin{align*} A^{\dagger} =& \lim_{\delta \to 0} \left( A^{T} A + \delta^{2} I \right)^{-1} A^{T} \\ =& \lim_{\delta \to 0} A^{T} \left( A^{T} A + \delta^{2} I \right)^{-1} \end{align*} $$


  1. 김상동, 김필수, 신병춘, 이용훈. (2012). 수치행렬해석: p78. ↩︎