エルミート行列空間と半正定値行列の凸錐
定義
$n \in \mathbb{N}$ としましょう。
エルミート行列空間
サイズが$n \times n$のエルミート行列の集合を次のように表します。 $$ \mathbb{H}_{n} := \left\{ A \in \mathbb{C}^{n \times n} : A = A^{\ast} \right\} $$
正定値行列の集合
サイズが$n \times n$の正定値行列の集合を$\mathbb{P}_{n}$のように表します。
定理
$\mathbb{H}_{n}$はベクトル空間である
- [1]: スカラー体$\mathbb{R}$に対して、 $\mathbb{H}_{n}$はベクトル空間です。
$\mathbb{P}_{n}$は$\mathbb{H}_{n}$の凸錐である
- [2]: すべての$a, b > 0$と$X, Y \in \mathbb{P}_{n}$に対して、次が成り立ちます。 $$ aX + bY \in \mathbb{P}_{n} $$ つまり、$\mathbb{P}_{n} \subset \mathbb{H}_{n}$は$\mathbb{H}_{n}$の凸錐です。
証明
[1]
$\mathbb{H}_{n}$のスカラー体が実数集合$\mathbb{R}^{1}$で与えられている限り、任意の$X, Y \in \mathbb{H}_{n}$に対するスカラー倍は行列の転置や複素数の共役にも関係なく、ベクトル空間のさまざまな条件を自明に満たします。
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[2] 1
まず、正定値行列はエルミート行列であるため、$\mathbb{P}_{n} \subset \mathbb{H}_{n}$が成立します。任意の$X , Y$が正定値行列である場合、すべてのベクトル$\mathbf{v} \in \mathbb{C}^{n}$に対して$\mathbf{v}^{\ast} X \mathbf{v} > 0$であり、$\mathbf{v}^{\ast} Y \mathbf{v} > 0$なので、すべてのスカラー$a, b > 0$に対して次が成り立ちます。 $$ \begin{align*} & \mathbf{v}^{\ast} \left( aX + bY \right) \mathbf{v} \\ =& \mathbf{v}^{\ast} aX \mathbf{v} + \mathbf{v}^{\ast} bY \mathbf{v} \\ =& a \mathbf{v}^{\ast} X \mathbf{v} + b \mathbf{v}^{\ast} Y \mathbf{v} \\ >& 0 \end{align*} $$
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