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分子生物学の中心原理 📂アルゴリズム

分子生物学の中心原理

原理

分子生物学の中心原理 もしくは セントラルドグマcentral dogmaとは、遺伝情報がDNAからRNAへ、RNAからタンパク質へと伝達されるという仮説で、以下の三つの現象から成り立っている。

  1. 複製:DNAは自らを複製する。
  2. 転写:DNAと同じ情報を持つRNAが作られる。
  3. 翻訳:RNAの情報に従って、タンパク質が合成される。

解説

セントラルドグマは、DNAの二重螺旋構造を明らかにしたことでも有名なフランシス・クリックが1958年に発表した理論で、その名の通り分子生物学において非常に重要である。遺伝子が発現してタンパク質が作られる過程を非常に簡潔かつ正確に説明している。当初は複製→転写→翻訳の順でのみ進行し、その逆の過程は存在しないとも主張された。

複製

複製とは、その名の通り、DNAが自分自身と同じコピーを作る現象である。二重螺旋構造を持つDNAが二本に分かれると、DNAポリメラーゼが各鎖を辿りながら反対側の鎖を作り出す。塩基対は$A-T$, $G-C$のように相補的に組み合わさるため、一方の鎖から正確に反対側の塩基配列を再現することができる。 20201102\_165042.png

転写

日常的にはあまり使われない転写という言葉だが、書き写すくらいで簡略化できる。RNAはDNAのコピーであり、まったく同じではないが、遺伝情報を読み取るには十分である。RNAポリメラーゼはDNAの両鎖を分けて、相補的な塩基対となるようにRNAを作る。 20201102\_165048.png

翻訳

RNAは核から抜け出し、リボソームでアミノ酸が結合してタンパク質になる。

コンピュータ科学でたとえるなら、オブジェクト指向プログラミングではDNAはオブジェクト(Object)に、mRNAはインスタンス(Instance)に相当する。DNAを直接タンパク質に変換せずに、わざわざ複雑にする理由も、DNAを読み取り専用にして、そのコピーであるmRNAで作業を行う方が、遺伝データの管理の観点から安定していると説明できる。

なぜmRNAなのか?

一方で、RNAという言葉を置いて、mRNAmessenger RNAと言うのは、真核生物の細胞核で転写されたmRNAが、遺伝情報を核膜の外に「伝達」するからであり、RNAという言葉自体がセントラルドグマで言いたいRNAだけを指す表現ではないからである。本来RNAの定義によれば、鎖の形をしたヌクレオチドの重合体であれば十分であり、一部の細菌はRNAのみで遺伝情報を保管する場合もある。要するに、すべてのRNAがDNAから転写されたわけではないということである。