自律システムの保存量
📂動力学自律システムの保存量
定義
空間 X と関数 f:X→X に関連する次のようなベクターフィールドが微分方程式で与えられているとしよう。
x˙=f(x)
与えられたシステムに依存する定数関数 h:X→R が存在すれば、これを保存量という。
説明
物理学的、つまり力学的なセンスに慣れているならば、保存量という概念は全く新しくないはずだ。例えば、理想的な状態で鉛直方向に反対にボールを投げた場合、ボールの運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの合計は一定に保持される。これを数学的、つまり動力学的にアプローチするならば、正確にシステムに依存する定数関数の存在性と等価になる。
古典力学モデル
x˙=y˙=yx−x3−δy,δ≥0
このような強制されない減衰オシレータを考えてみよう。x を粒子の位置とみなすならば、y は速度であり、y′ は加速度になるだろう。すると、微分方程式で減衰項 −δy は速度に比例して動く方向の反対に力を及ぼすことを表している。このような作用により、粒子は徐々にエネルギーを失い、最終的には停止するだろう。現実世界のほとんどの物理現象は、このように摩擦や減衰があるため、永遠に動き続けることはできない。ここで、減衰が起こらない理想的な状況 δ=0 を仮定する思考実験を行ってみよう。文字をxに統一すると
x¨=x−x3−0x’
全ての項にx˙を掛けて左辺に移動して整理すると
x˙x’’−x˙x+x˙x3=0
ここで各項をdtdで微分したと考えると
dtd(21(x’)2−2x2+4x4)=0
この式で右辺が0であるため、次のような定数関数 h(x,y) を導ける。
h(x,y):=2y2−2x2+4x4
ここで物体の質量がm=1であるとすれば、21⋅y2は運動エネルギーであり、4x4−2x2がポテンシャルエネルギーであるとすると、hは変わらない保存量であり、エネルギーの総量として見ることができる。
疾病拡散モデル
保存量の概念を説明する際に、力学のシステムを取り上げることは非常に直感的だが、関数で定義された保存量を説明する際には、物理的な意味ばかりを思い浮かべる必要はない。例えば次のようなシステムを考えてみよう。
dtdS=dtdI=dtdR=−NβISNβIS−γIγI
ここでNは全人口、Sは病気にかかる可能性のある人口、Iは病気を広げる人口、Rは免疫を持つ人口で、このモデルをSIRモデルという。この場合、S,I,Rの合計は必ずNにならなければならない。つまりこの場合、保存量は全ての状態を合計したNになるだろう。
h(S,I,R)=S+I+R=N
もちろんこの場合、あまりにも当たり前で無意味に思えるかもしれないが、ポイントは保存量が重要かどうかに関わらず、柔軟に考えることである。また、モデリングにおいてこのような単純な事項をチェックせずに大きなエラーを犯すこともあるので、知っておく方が確実に良い。