収束する実数列の性質
📂解析学収束する実数列の性質
定理1
{sn}, {tn}が実数(または複素数)の数列で、n→∞limsn=s, n→∞limtn=tとすると
(a) n→∞lim(sn+tn)=s+t
(b) ∀c∈C,n→∞limcsn=csandn→∞lim(c+sn)=c+s
(c) n→∞limsntn=st
(d) ∀sn=0,s=0,n→∞limsn1=s1
もちろんRkについても拡張可能だ。定理2を確認しよう。
証明
(a)
任意の正数ε>0が与えられたとする。すると、以下の条件を満たす2つの正数N1, N2が存在する。
n≥N1n≥N2⟹∣sn−s∣<2ε⟹∣tn−t∣<2ε
今、N=max(N1,N2)としよう。そうすると、n≥Nに対して
∣(sn+tn)−(s+t)∣≤∣sn−s∣+∣tn−t∣<ε
である。従って
n→∞lim(sn+tn)=s+t
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(b)
**(a)**が成り立つことにより自明である。
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(c)
任意の正数ε>0が与えられたとする。すると、以下の式を満たす2つの正数N1, N2が存在する。
n≥N1n≥N2⟹∣sn−s∣<ε⟹∣tn−t∣<ε
今、N=max(N1,N2)とすると
n≥N⟹∣(sn−s)(tn−t)∣<ε
従って
n→∞lim(sn−s)(tn−t)=0
この時
sntn−st=(sn−s)(tn−t)+s(tn−t)+t(sn−s)
が成り立つ。上の式に(a)**, (b), (eq1)を適用すると
n→∞lim(sntn−st)=n→∞lim(sn−s)(tn−t)+n→∞lims(tn−t)+n→∞limt(sn−s)=0+0+0=0
従って
n→∞limsntn=st
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(d)
n→∞limsn=sと仮定したので、以下の式を満たす正数mを選ぶことができる。
∀n≥m,∣sn−s∣<21∣s∣
しかし、∣s∣−∣sn∣≤∣sn−s∣なので、上の式から以下の式を得る。
∀n≥m,∣sn∣>21∣s∣
今、任意の正数ε>0が与えられたとする。すると、以下の式を満たすNが存在する。
n≥N⟹∣sn−s∣<21∣s∣2ε
従って(eq2), (eq3)により、n≥Nに対して
sn1−s1=snssn−s<∣s∣22∣sn−s∣<ε
なので
n→∞limsn1=s1
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定理2
xn∈Rkがxn=(xn,1,xn,2,⋯,xn,k)だとする。そうすると
(e) xnがx=(x1,x2,⋯,xk)に収束する必要十分条件はn→∞limxn,j=xj(1≤j≤k)が成り立つことである。
(f) {xn}, {yn}をRkでの数列、{βn}を実数列とする。そして、以下の関係が成り立つと仮定する。
n→∞limxn=x,n→∞limyn=y,n→∞limβn=β
そうすると
n→∞lim(xn+yn)=x+y,n→∞limxn⋅yn=x⋅y,n→∞limβnxn=βx
が成り立つ。
証明
(e)
(⟹)
xn→xと仮定する。するとRk上での距離の定義により
∣xn,j−xj∣≤∣xn−x∣
は自明だ。従って仮定により、全ての正数εに対して
n≥N⟹∣xn,j−xj∣≤∣xn−x∣<ε
を満たすNが存在するので
n→∞limxn,j=xj(1≤j≤k)
が成り立つ。
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(⟸)
各jに対してn→∞limxn,j=xjが成り立つと仮定する。すると全ての正数εに対して
n≥N⟹∣xn,j−xj∣<kε
を満たすNが存在する。従って、同じ正数ε, Nに対して
n≥N⟹∣xn−x∣=∣xn,1−x1∣2⋯∣xn,k−xk∣2<kkε2=ε
なので
n→∞limxn=x
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(f)
定理1 と (e) によって成り立つ。
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