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角運動量とトルク 📂古典力学

角運動量とトルク

角運動量1

運動量は、物体が直線運動する際の運動の状態を表す物理量である。質量が大きければ大きいほど、速度が速ければ速いほど、運動量は大きくなる。物理学では、物体の運動がどのように変化するかに関心がある。そのため、物体の運動状態を変える原因である力を、運動量の変化として表現する。

$$ \mathbf{F}=\frac{d \mathbf{p}}{dt} $$

さて、回転運動に対しても似たような物理量を定義しようとしている。回転運動では、直線運動と異なり、回転半径があり、これが物体の運動に影響を与える。したがって、回転する物体の運動状態を示すものを角運動量angular momentumと呼び、以下のように定義する。5F112E601.png

$$ \mathbf{L}=\mathbf{r}\times \mathbf{p} $$

線運動量は質量と速度の積であるため、原点によって値は変化しないが、角運動量には位置ベクトル$\mathbf{r}$が含まれるため、原点をどこに設定するかによって値が異なる場合があるので、注意が必要である。幾つかの事実を確認すれば、このように定義することが妥当で自然であると納得できるだろう。

トルク

直線運動では物体の運動状態を示すものを運動量とし、運動量の変化を力とした。同様に、回転運動では運動状態を示すものを角運動量としたので、角運動量の変化は回転運動の状態を変化させる何かと言える。その物理量をトルクTorqueと呼び、$\mathbf{N}$で表現する。

$$ \mathbf{N}=\frac{ d \mathbf{L}}{ dt } $$

上記の式の右辺を展開すると、次のようになる。

$$ \begin{align*} \frac{ d \mathbf{L}}{ dt }&=\frac{ d (\mathbf{r}\times \mathbf{p})}{ dt } \\ &=\frac{d \mathbf{r}}{dt}\times \mathbf{p}+\mathbf{r}\times \frac{ d \mathbf{p}}{ dt } \\ &= \mathbf{v}\times \mathbf{p} + \mathbf{r}\times\mathbf{F} \end{align*} $$

$\mathbf{p} = m\mathbf{v}$であるため、$\mathbf{v}\times \mathbf{p}=\mathbf{v}\times(m\mathbf{v})=\mathbf{0}$となる。したがって、以下の式を得る。

$$ \frac{ d \mathbf{L}}{ dt }=\mathbf{r} \times \mathbf{F} $$

上記の式によれば、合力が$\mathbf{0}$であれば、角運動量の変化はなく、これは回転運動の状態が変わらないことを意味する。角運動量の定義が実際の物理現象をよく表していることが確認できる。さらに、上記の式からトルクに関する公式を以下のように得る。

$$ \mathbf{N}=\mathbf{r} \times \mathbf{F} $$

直線運動する物体を考えてみよう。その物体が運動する方向と同じ方向に外力が与えられたと仮定しよう。すると、方向が$\mathbf{r}$と$\mathbf{F}$の方向と同じであるため、トルクは$\mathbf{0}$である。トルクは角運動量を変化させるものであるが、それが$\mathbf{0}$であるということは、物体の回転運動の状態が変わらないという意味である。実際に、直線運動する物体の回転運動の状態は「回転していない」のままである。したがって、この式が実際の物理現象をよく表していることが分かる。さらに、中心力を受けながら回転運動する物体の場合、位置ベクトル$\mathbf{r}$と中心力$\mathbf{F}$の方向が同じであるため、トルクが$\mathbf{0}$となり、角運動量が保存されることが分かる。この事実から面積速度一定の法則が導かれる。Torque\_animation(1).gif トルクは回転運動の変化を与えるもので、その変化をどのように与えるかは、右手の法則で決まる。上のGIF2にあるように、トルクの方向が上方向であれば、右手の法則によって物体が反時計回りに動くように状態が変わる。


  1. Grant R. Fowles and George L. Cassiday, Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p226-227 ↩︎

  2. https://en.wikipedia.org/wiki/Torque ↩︎