物理学における微分作用素とは?
説明
微分方程式を解く方法の一つに、微分演算子を使って解く方法がある。微分演算子$D$を以下のように定義しよう。
$$ D:= \frac{d}{dx} $$
微分される変数を明確に表示する時は、$D_{x}$のように記される。偏微分においては、以下のように表される。
$$ \partial _{x}:=\frac{ \partial }{ \partial x},\quad \partial_{y}=\frac{ \partial }{ \partial y} $$
微分演算子を使えば、微分方程式は以下のように表される。
$$ \begin{align*} y^{\prime \prime}+4y^{\prime}-y=0 && \implies&& D^{2}y+4Dy-y=0 \\ && && (D^{2}+4D-1)y=0 \end{align*} $$ ここで、$y=0$の解が物理的に意味がない。したがって、微分方程式の解は$Dy=ry$を満たす定数$r$に関する二次方程式 $$ r^{2}+4r-1=0 $$ を解くことに変わる。$Dy=ry$を解くことは固有値問題であるため、実質的に固有値問題を解けば微分方程式を解いたことになる。微分演算子は微分が含まれているので、操作の順序に特に注意が必要だ。例えば、$D$と$x$は交換できず、$Dx\ne xD$となる。$y$を$x$に関する関数とすると、 $$ Dxy=D(xy)=\frac{ d }{ d x }(xy)=y+xy^{\prime}=y+xDy=(xD+1)y $$ であるため、 $$ Dx=xD+1 $$ である。微分演算子について、以下のような有用な性質がある。
性質
$$ \begin{align*} D(D+x) &= D^{2}+xD+1 \tag{a} \\ (D-a)(D-b)=(D-b)(D-a) &= D^{2}-(a+b)D+ab \tag{b} \\ (D+1)(D^{2}-D+1) &= D^{3}+1 \tag{c} \\ Dx &= xD+1 \tag{d} \\ (D-x)(D+x) &=D^{2}-x^{2}+1 \tag{e} \\ (D+x)(D-x) &= D^{2}-x^{2}-1 \tag{f} \end{align*} $$
証明
証明方法が同じであるため、いくつかの証明過程を省略する。
$(a)$
$$ \begin{align*} D(D+x)y &= D(y^{\prime}+xy) \\ &= y^{\prime \prime}+y+xy^{\prime} \\ &= D^{2}y+xDy+y \\ &= (D^{2}+xD+1)y \end{align*} $$ したがって、 $$ D(D+x) = D^{2}+xD+1 $$
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$(b)$
$$ \begin{align*} (D-a)(D-b)y &=(D-a)(y^{\prime}-by) \\ &= y^{\prime \prime}-ay^{\prime}-by^{\prime}+aby \\ &= D^{2}y-(a+b)Dy+aby \\ &=[D^{2}-(a+b)D+ab]y \\ &=[D^{2}-(b+a)D+ba]y \\ &=(D-b)(D-a)y \end{align*} $$ したがって、 $$ (D-a)(D-b)=(D-b)(D-a) = D^{2}-(a+b)D+ab $$
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$(e)$
$$ \begin{align*} (D-x)(D+x)y &= (D-x)(y^{\prime}+xy) \\ &= y^{\prime \prime} -xy^{\prime} +y+xy^{\prime}-x^{2}y \\ &= D^{2}y+(1-x^{2})y \\ &= (D^{2}-x^{2}+1)y \end{align*} $$ したがって、 $$ (D-x)(D+x)=D^{2}-x^{2}+1 $$
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