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ヒルベルト空間の共役作用素 📂ヒルベルト空間

ヒルベルト空間の共役作用素

ビルドアップ1

ヒルベルト空間 $\left( H, \left\langle \cdot , \cdot \right\rangle_{H} \right)$ と $\left( K, \left\langle \cdot , \cdot \right\rangle_{K} \right)$ において有界線形作用素 $T : K \to H$ が与えられているとしよう。すると、任意の固定された元 $\mathbf{w} \in H$ に対して、以下のように定義された $\Phi : K \to \mathbb{C}$ は線形汎関数 $\Phi \in K^{ \ast }$ になる。

$$ \Phi \mathbf{v} := \left\langle T \mathbf{v} , \mathbf{w} \right\rangle_{H} $$

リースの表現定理によれば、ヒルベルト空間 $K$ は $\Phi \in K^{ \ast }$ とすべての $\mathbf{v} \in K$ に対して以下を満たす唯一の元 $T^{ \ast } \mathbf{w} \in K$ が存在しなければならない。

$$ \Phi \mathbf{v} = \left\langle \mathbf{v} , T^{ \ast } \mathbf{w} \right\rangle_{K} $$

先に固定された元 $\mathbf{w} \in H$ に対して $T^{ \ast } \mathbf{w} \in K$ が具体的に何であるかはわからないが、$T^{ \ast }$ は $\mathbf{w}$ を $T^{ \ast } \mathbf{w}$ にマッピングする作用素 $T^{ \ast } : H \to K$ と見なすことができる。このような議論から、次のような概念を思い浮かべることができる。

定義

$H,K$ がヒルベルト空間であるとする。有界線形作用素 $T : K \to H$ に対して、以下を満たす $T^{ \ast } : H \to K$ を $T$ の随伴作用素adjoint operatorと呼ぶ。

$$ \left\langle T \mathbf{v} , \mathbf{w} \right\rangle_{H} = \left\langle \mathbf{v} , T^{ \ast } \mathbf{w} \right\rangle_{K} ,\quad \forall \mathbf{v} \in K $$

説明

双対作用素dual operatorとも呼ばれる。$T^{\#}$とも表示される。

随伴作用素は以下のような性質を持つ。

  • $T^{ \ast }$ は線形であり、有界である。
  • $\left( T^{ \ast } \right)^{ \ast } = T$
  • $\left\| T^{ \ast } \right\| = \left\| T \right\|$

一方、$H = K$ の時、次のような良い性質を持つ随伴作用素はもっと特別な名前で呼ばれる。$H$ がヒルベルト空間であり、$T : H \to H$ が線形で有界であるとする1

  • $T = T^{ \ast }$ の場合、$T$ は自己随伴self-adjointと呼ばれる。
  • $TT^{ \ast } = T^{ \ast }T = I$ の場合、$T$ はユニタリunitaryと呼ばれる。

$T$ が自己随伴である場合、全ての $\mathbf{v} , \mathbf{w} \in H$ に対して

$$ \left\langle T \mathbf{v} , \mathbf{w} \right\rangle = \left\langle \mathbf{v} , T \mathbf{w} \right\rangle $$

$T$ がユニタリである場合、全ての $\mathbf{v} , \mathbf{w} \in H$ に対して

$$ \left\langle T \mathbf{v} , T \mathbf{w} \right\rangle = \left\langle \mathbf{v} , \mathbf{w} \right\rangle $$

定義から、ユニタリ $T$ は可逆であり、

$$ T^{-1} = T^{ \ast } $$

特に、ユニタリ作用素は正規直交基底と関連した非常に重要な性質を持つ。


  1. Ole Christensen, Functions, Spaces, and Expansions: Mathematical Tools in Physics and Engineering (2010), p71-72 ↩︎ ↩︎