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解析数論におけるメビウス関数 📂整数論

解析数論におけるメビウス関数

定義 1

素数 $p_{1} , \cdots , p_{k}$ に対して、自然数 $n$ を以下のように表すとしよう。このように定義された算術関数 $\mu$ をメビウス関数という。 $$ \mu (n) := \begin{cases} 1 &, n=1 \\ (-1)^{k} &, a_{1} = \cdots = a_{k} = 1 \\ 0 & , \text{otherwise} \end{cases} $$

基礎性質

  • [1] メビウス級数: アイデンティティ $I$ だ。言い換えると、 $$ \sum_{d \mid n } \mu (d) = I(n) $$
  • [2] 乗法性: $\gcd (m,n) = 1$ を満たす全ての $m, n \in \mathbb{N}$ に対して、$\mu (mn) = \mu (m) \mu (n)$

説明

$$ \begin{matrix} n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 & 8 & 9 & 10 \\ \mu (n) & 1 & -1 & -1 & 0 & -1 & 1 & -1 & 0 & 0 & 1 \\ \sum_{d \mid n} \mu (d) & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \end{matrix} $$ メビウス関数は簡単に言えば、同じ素数が$2$回以上かけられていない数だけを気にする関数だ。素数が$2$回以上かけられていなかった場合、素数が偶数個使われたのか奇数個使われたのかによって正負が変わるだけだ。しかし、これは単に定義についての説明に過ぎない。メビウス関数はそれ自体では直感的な意味が分からないかもしれないが、整数論全般に渡って終わりなく登場する重要な関数だ。特に解析的整数論ではなおさらである。

証明

[1]

$n = p_{1}^{a_{1}} \cdots p_{k}^{a_{k}} > 1$ とすると、二項定理により、 $$ \begin{align*} & \sum_{d \mid n } \mu (d) \\ =& \mu (1) \\ & + \mu (p_{1}) + \cdots + \mu (p_{k}) \\ & + \mu (p_{1}p_{2}) + \cdots + \mu (p_{k-1}p_{k}) \\ & \vdots \\ & + \mu (p_{1}p_{2} \cdots p_{k-1}p_{k}) \\ =& 1 \\ & + \underbrace{(-1) + \cdots + (-1)}_{k} \\ & + \underbrace{1 + \cdots + 1}_{k(k-1)/2} \\ & \vdots \\ & + (-1)^{k} \\ =& 1 + \binom{k}{1} (-1) + \binom{k}{2}(-1)^{2} + \cdots + \binom{k}{k} (-1)^{k} \\ =& [1 + (-1)]^{k} \end{align*} $$

[2]

$m$ または $n$ のいずれかが素数の平方を約数に持つ場合、$\mu$ の定義から $\mu (mn) = 0$ であり、$\mu (m) \mu (n) = 0$ であるため、 $$ \mu (mn) = \mu (m) \mu (n) $$ したがって、$m$ と $n$ がそれぞれの素数が一度だけかけられた形であると仮定しよう。 $$ m = p_{1} \cdots p_{s} \\ n = q_{1} \cdots q_{t} $$ すると、 $$ \mu (mn) = (-1)^{s + t} = (-1)^{s} (-1)^{t} = \mu (m) \mu (n) $$


  1. Apostol. (1976). イントロダクション トゥ アナリティック ナンバー セオリー: p24. ↩︎