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乗法的関数のアーベル群 📂整数論

乗法的関数のアーベル群

定理1

乗法的関数の集まり MMと二項演算 \astについて (M,)(M,*)アーベル群だ。

説明

算術関数の集合 AAコンボリューション \ast とともに アーベル群 (A,)(A,*)となるように、乗法的関数もアーベル群となる。もちろん MAM \le A、すなわち MMAAサブグループになる。

証明

モノイド <G, >\left< G, \ast\ \right>の元 aaと単位元 eeに関してa a=a a=ea \ast\ a’ = a’ \ast\ a = eを満たすaa 'が存在する場合、<G, >\left< G, \ast\ \right>groupと定義する。すなわち、群は以下の性質を満たす二項演算構造だ。

  • (i): 演算に対して結合律が成立する。
  • (ii): すべての元に対して単位元が存在する。
  • (iii): すべての元に対して逆元が存在する。

ここに、次の条件を追加的に満たす場合、アーベル群と言う。

  • (iv): 演算に対して交換律が成立する。

Part (i), (iv). 結合律と交換律

コンボリューションの性質

  • 結合律: (fg)k=f(gk)\left( f \ast g \right) \ast k = f \ast (g \ast k)
  • 交換律: f g=g ff \ast\ g = g \ast\ f

乗法的関数は算術関数であり、すべての算術関数は結合律と交換律を満たす。


Part (ii). 単位元

アイデンティティ: 以下のように定義された算術関数 II をアイデンティティ関数という。 I(n):=[1n] I(n) := \left[ {{ 1 } \over { n }} \right]

I(mn)=I(m)I(n)={1,m=n=10,otherwise I(mn) = I(m) I(n) = \begin{cases} 1 &, m = n = 1 \\ 0 & , \text{otherwise} \end{cases} であるから、完全乗法的関数であり、当然 IMI \in M である。すべての算術関数に対して アイデンティティ MM は次を満たすために (M,)( M,*) の単位元として存在する。 I f=f I=f I \ast\ f = f \ast\ I = f

コンボリューションに関する乗法的性質:

  • [1]: ffgg乗法的関数ならば f gf \ast\ g も乗法的関数だ。
  • [2]: ggfgf \ast g が乗法的関数ならば ff も乗法的関数だ。

Part (i). \astに対して閉じている

コンボリューションに関する乗法的性質 [1]によればMM\astに対して閉じている。


Part (iv). 逆元

乗法的関数の性質: ff が乗法的ならば f(1)=1f(1) = 1 である。

コンボリューションにおけるインバース: 算術関数 fff(1)0f(1) \ne 0 を満たす場合、そのインバースf1f^{-1} は唯一存在する。

乗法的関数 ff は算術関数であり、乗法的関数の性質によりf(1)0f(1) \ne 0を満たすため、インバースf1f^{-1}が存在する。一方、**Part (iii).**で f f1=IMf \ast\ f^{-1} = I \in M であり、コンボリューションに関する乗法的性質 [2]により、f g=If \ast\ g = I を満たす g=f1g = f^{-1} は乗法的関数でなければならない。つまり、乗法的関数fMf \in Mに対してインバースf1Mf^{-1} \in Mは唯一存在する。


  1. Apostol. (1976). Introduction to Analytic Number Theory: p35~36. ↩︎