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楕円の一般化:楕円体 📂行列代数

楕円の一般化:楕円体

定義

線形変換$A \in \mathbb{R}^{m \times m}$について、$m$次元の単位球$N := \left\{ \mathbb{x} \in \mathbb{R}^{m} : \left\| \mathbb{x} \right\|_{2} = 1 \right\}$のイメージ$AN$を楕円体と言う。$A$の固有値$\sigma_{1}^{2} > \cdots \ge \sigma_{m}^{2} \ge 0$とそれに対応する単位固有ベクトル$u_{1} , \cdots , u_{m}$について、$\sigma_{i} u_{i}$を楕円体のaxisと言う。

説明

$m$次元の単位球は、中心が$\mathbb{0} \in \mathbb{R}^{m}$で、半径が$1$の点の集まりで、$m=2$の時は、我々がよく知っている単位円になる。

楕円体は、楕円形体あるいは超楕円hyperellipseとも呼ばれる図形で、楕円面楕円球面などの名前が間違っているというよりは、そういう緩和を意味に置かずに、読んでいる文脈に従ってその定義を把握する方がいい。どこかでは中までぎっしり詰まったものを楕円体と呼び、またどこかではその皮だけを楕円体と呼ぶこともある。

幾何学

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線形変換に十分慣れていれば、これがなぜ楕円を多次元に拡張したものと呼ばれるのか容易に理解できるだろう。直感的な例としては、単位円の全ての点に$A = \begin{bmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix}$を取って横に長く伸ばした姿を想像するといい。これは円の方程式$N : x^{2} + y^{2} = 1$の解が線形変換$A$によって$\displaystyle AN : {{ x^{2} } \over { 2 }} + y^{2} = 1$の解に変わったものだ。この時、$A$の固有値は$\sqrt{2}^{2} , \sqrt{1}^{2}$であるから、楕円体$AN$の軸は当然$\sqrt{2}(1,0)$と$\sqrt{1}(0,1)$だ。

線形代数

楕円体を語る時に、固有値を$\sigma_{i}^{2}$と特に書くことは、楕円体が特異値分解と密接な関係があるためだ。特異値分解は数値的線形代数学において、$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$に対して

$$ A v_{i} = \sigma_{i} u_{i} $$

を満たす何らかの$\sigma_{i}>0$と$v_{i} \in \mathbb{R}^{n}$、$u_{i} \in \mathbb{R}^{m}$を見つける方法だ。特異値分解の存在性の証明において、$\sigma_{i}^{2}$は$A^{T}A$の固有値であり、単位固有ベクトル$u_{1} , \cdots , u_{m}$は相互独立だ。ここから$\sigma_{i} u_{i}$を軸と呼ぶことは自然な定義になる。

一般化

線形代数の説明から分かるように、本来楕円体は$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$に対しても一般化可能だ。しかし、読む立場からすると特異値と固有値の関係を理解するのも難しく、幾何学的な意味が弱くなってしまうので、仕方なく$A \in \mathbb{R}^{m \times m}$についての定義を紹介した。この抽象的な定義を理解することに成功したら、$A$のランク$r = \dim C (A)$について$\sigma_{r+1} = \cdots = \sigma_{m} = 0$としてより一般的な楕円体の定義を受け入れることができるだろう。ただし、もはや$\sigma_{i}^{2}$を$A$の固有値と言うことはできなくなり、特異値分解の話を出さない場合、「ある正の数$\sigma_{i}>0$」と呼ぶしかないだろう。