部分空間トポロジー、相対トポロジー
定義 1
位相空間 $(X,\mathscr{T})$と部分集合 $A \subset X$が与えられたとしよう。すると以下の集合 $$ \mathscr{T}_{A} =\left\{ A\cap U\ :\ U\in \mathscr{T} \right\} $$ は $A$上の位相である。このとき $\mathscr{T}_{A}$を部分空間位相Subspace Topologyまたは相対位相と呼ぶ。また、位相空間 $(A, \mathscr{T}_{A})$を $(X,\mathscr{T})$の部分空間Subspaceと呼ぶ。
定理
- [0]: 位相空間 $(X, \mathscr{T}$) と部分集合 $A \subset X$に対して $$ \mathscr{T}_{A} = \left\{ A\cap U\ :\ U \in \mathscr{T}\right\} $$ は $A$上の位相となる。
位相空間 $X$と部分空間 $A$が与えられたとしよう。部分空間 $A$で開集合、閉集合の同値条件は以下のようである。
- [a1]: $V\subset A$が $A$で開集合であるための必要十分条件は、$V= A\cap U$を満たす $X$での開集合 $U$が存在することである。
- [b1]: $F\subset A$が $A$で閉集合であるための必要十分条件は、$F=A\cap E$を満たす $X$での閉集合 $E$が存在することである。
部分空間で開集合(閉集合)であっても、全体空間で開集合(閉集合)である保証はない。部分空間が全体空間に対して開集合(閉集合)であれば、その性質が全体空間でも保証される。位相空間 $(X,\mathscr{T})$と部分空間 $(A,\mathscr{T}_{A})$、部分集合 $B\subset A\subset X$が与えられたとしよう。
- [a2]: $B$が部分空間 $A$で開集合であり、$A$が $X$で開集合であれば、$B$は $X$で開集合である。
- [b2]: $B$が部分空間 $A$で閉集合であり、$A$が $X$で閉集合であれば、$B$は $X$で閉集合である。
- [3]: $\mathscr{B}$を位相空間 $(X,\mathscr{T})$の基底としよう。すると $$ \mathscr{B}_{A} =\left\{ A\cap B\ :\ B\in \mathscr{B} \right\} $$ は部分空間 $(A,\mathscr{T}_{A})$の基底である。
説明
混乱しないように、いくつかの表記についてはっきりと確認しておこう。$(X,\mathscr{T})$が全体空間で $$ \mathscr{T}_{A}=\left\{A\cap U\ :\ U \in \mathscr{T} \right\} $$ は部分集合 $A$の位相である。つまり、部分空間 $(A,\mathscr{T}_{A})$を形成する。$\mathscr{B}$は全体集合 $X$の基底である。$\mathscr{B}_{A}$は全体集合の基底の各要素と $A$の交差集合のコレクションである。これが部分集合 $A$の基底となるというのが定理の内容である。 $$ \mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}=\left\{U_{A}\subset A\ :\ \forall\ x \in U_{A},\ \exists\ (A\cap B) \in \mathscr{B}_{A}\ \ \text{s.t.}\ x\in (A\cap B) \subset U_{A}\right\} $$ さらに進んで、$\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$が $\mathscr{T}_{A}$と同じであることが核心である。内容が複雑に感じられるかもしれない。整理して説明すると次のようになる。
- 全体空間 $X$の基底の要素と $A$を交差させたものを集めると、$A$の基底になる。
- その基底 $\mathscr{B}_{A}$で生成した位相は $\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$である。
- 2で生成した位相 $\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$は $X$の開集合と $A$を交差させたものの集合である $\mathscr{T}_{A}$と同じである。
証明
[0]
- $(T1)$: $A \cap \varnothing =\varnothing$、$A \cap X=A$であるから、空集合と全体集合が $\mathscr{T}_{A}$に属する。
- $(T2)$: $V_\alpha \in \mathscr{T}_{A}( \alpha \in \Lambda)$としよう。$\mathscr{T}_{A}$の定義により、各々の $V_\alpha$に対して、$V_\alpha = A \cap U_\alpha$を満たす $U_\alpha$が存在する。位相の定義により $U=\cup_{\alpha \in \Lambda} U_\alpha \in \mathscr{T}$である。そうすると $$ \bigcup_{\alpha \in \Lambda} V_\alpha = \bigcup_{\alpha \in \Lambda} (A \cap U_\alpha ) =A\cap (\cup_{\alpha \in \Lambda} U_\alpha ) =A\cap U \in \mathscr{T}_{A} $$ であるから $\bigcup _{\alpha \in \Lambda} V_\alpha \in \mathscr{T}_{A}$である。
- $(T3)$: $V_{1},\ \cdots\ ,V_{n} \in \mathscr{T}_{A}$としよう。同様に、各々の $V_{i}$に対して、$V_{i} =A \cap U_{i}$を満たす $U_{i}$が存在する。そして $U=\cap _{i} U_{i} \in \mathscr{T}$であるから $$ \bigcap _{i=1}^n V_{i} = \bigcap_{i=1}^n (A\cap U_{i}) = A\cap \left( \bigcap_{i=1}^n U_{i} \right) =A\cap U \in \mathscr{T}_{A} $$ である。従って $\bigcap_{i=1}^n V_{i} \in \mathscr{T}_{A}$である。
位相の条件 三つを満たすので $\mathscr{T}_{A}$は $A$の上の位相である。
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[a1]
距離空間での証明を参照せよ。$\mathscr{T}_{A}$の定義により自明である。
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[b1]
$(\implies)$ $F$が $A$で閉集合であるため、$A-F$は $A$で開集合である。そこで[a1]により、$A-F=A\cap U$を満たす $X$での開集合 $U$が存在する。$U$が開集合であるため、$E=X-U$は $X$で閉集合である。それで $$ A\cap E=A\cap (X-U)=A-(A\cap U)=A-(A-F)=F $$
$(\Longleftarrow )$ $E$は $X$で閉集合であるため、$X-E$は $X$で開集合である。そこで[a1]により、$A \cap (X-E)$は $A$で開集合である。$F^c=A-(A\cap E)=A\cap(X-E)$であるから、$F ^c$は $A$で開集合である。従って、$F$は $A$で閉集合である。
■
[a2]
$B$が $A$で開集合である場合、[a1]により、$B=A\cap U\ (U\in \mathscr{T})$を満たす $X$での開集合 $U$が存在する。仮定により、$A$は $X$で開集合である。従って、$B$は $X$で開集合の交差であり、$X$で開集合である。
■
[b2]
$B$が $A$で閉集合である場合、[b1]により、$B=A\cap E$を満たす $X$での閉集合 $E$が存在する。仮定により、$A$は $X$で閉集合であり、$B$は閉集合同士の交差であるため、$B$も $X$で閉集合である。
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[3]
パート1. $\mathscr{B}_{A}$は $A$の基底である。
[b1]: 任意の $x\in A$に対して、$A\subset X$であるから、$x\in X$である。$\mathscr{B}$が $X$の基底であるため、定義により、$x \in B \in \mathscr{B}$を満たす $B$が存在する。従って、$x\in (A\cap B ) \in \mathscr{B}_{A}$を満たす $A\cap B \in \mathscr{B}_{A}$が存在する。[b2]: 任意の $A\cap B_{1}$、$A\cap B_{2}$と $x\in \Big( (A\cap B_{1} ) \cap (A \cap B_{2}) \Big)$に対して $$ (A\cap B_{1})\cap (A \cap B_{2})=A\cap B_{1}\cap B_{2} $$ であるため、$x\in (B_{1}\cap B_{2})$である。$\mathscr{B}$が $X$の基底であるため、定義により、$x\in B_{3} \subset ( B_{1}\cap B_{2})$を満たす $B_{3}$が存在する。従って $$ x \in (A\cap B_{3})\subset \Big( A\cap (B_{1}\cap B_{2}) \Big)=(A\cap B_{1}) \cap (A\cap B_{2}) $$ である。基底となる二つの条件を満たしたので、$\mathscr{B}_{A}$は部分集合 $A$の基底である。
パート2. $\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}=\mathscr{T}_{A}$である。
$(\subset)$ $\mathscr{B}$が $(X,\mathscr{T})$の基底であるため、$\mathscr{T}_{\mathscr{B}}=\mathscr{T}$であり、$\mathscr{B}\subset \mathscr{T_{\mathscr{B}}}=\mathscr{T}$である。従って、全ての $B \in \mathscr{B}$に対して、$B\in \mathscr{T}$である。$\mathscr{T}_{A}$の定義によって、$A\cap B \in \mathscr{T}_{A}$である。従って $$ \mathscr{B}_{A} \subset \mathscr{T}_{A} $$ $\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$は $\mathscr{B}_{A}$を含む最も小さい位相であるため $$ \mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}} \subset \mathscr{T}_{A} $$
$(\supset )$ $V \in \mathscr{T}_{A}$と仮定する。[a1]によって、$V=A\cap U$を満たす $U\in \mathscr{T}$が存在する。また、$V$の任意の点 $x\in V \subset A$に対して、$x \in U$である。$\mathscr{B}$は$\mathscr{T}$を生成する基底であるため、$x\in B \subset U$を満たす $B\in \mathscr{B}$が存在する。従って、$A \cap B \in \mathscr{B}_{A}$が $$ x\in (A\cap B) \subset (A\cap U) =V $$ を満たす。これは、$V$がその $\mathscr{B}_{A}$が生成する $A$上の位相 $\mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$に属する条件であるため、$V \in \mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}}$である。従って $$ \mathscr{T}_{\mathscr{B}_{A}} \supset \mathscr{T}_{A} $$
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Munkres. (2000). 『Topology(2nd Edition)』: p89. ↩︎