タイト確率測度
📂確率論タイト確率測度
定義
空間Sが距離空間(S,ρ)であり、かつ可測空間(S,B(S))であるとする。
PがSで定義された確率測度であるとする。全てのε>0に対してP(K)>1−εを満たすようなコンパクト集合Kが存在すれば、Pはタイトtightと言われる。
説明
一般に、学部レベルの確率論では、タイトではない確率測度に出会うことはあまりない。例えば、正規分布に従う確率変数Xから導かれる確率測度PXがあるなら、ε>0がどうであれP(K)>1−εを満たすバウンデッドクローズド集合Kが存在しかねないし、ハイネ・ボレルの定理によってKはコンパクトであり、その結果PXがタイトであることも示せる。実は、R上で定義された確率変数によって導かれる全ての確率測度はタイトでもある。
こうしたタイトという概念を考える理由は、明らかに集合がコンパクトであることは扱いやすいからだ。Kがコンパクトであるとは、これを有限なオープンカバーに分割して考えられるということだ。
次の定理では、Aが何であれP(Kn)→P(A)を満たすようなコンパクト集合のシーケンス{Kn}n∈Nが存在することが保証される。コンパクト集合は有限に分割できるので、非常に扱いやすかったことを考えると、タイトという条件は非常に良いと言わざるを得ない。
定理
Pがタイトである⟺全てのA∈B(S)に対してP(A)=K:compact setsup{P(K):K⊂A}
証明
Pが(S,B(S))で定義された確率であるとしよう。そうすると、全てのA∈B(S)とε>0に対して、次を満たす閉集合Fεと開集合Gεが存在する。
Fε⊂A⊂GεP(Gε∖Fε)<ε
上記の性質により、P(A)−P(Fε)<εを満たすクローズドセットFε⊂Aが存在する。さらにPはタイトなので、P(K)>1−ε⟺P(Kc)<εを満たすコンパクトセットKが存在する。
P(A)≤P(Fε)+ε
ここでFεを以下のように分割すれば
P(A)≤P(Fε∩K)+P(F∖K)+ε
ここで、
P(F∖K)==<P(Ω∖K)P(Kc)ε
したがって、
P(A)≤P(Fε∩K)+2ε
コンパクト集合の性質: コンパクト集合Kの部分集合Fが閉集合であれば、Fはコンパクト集合である。
もちろんFε∩K⊂Kは閉集合なので、コンパクト集合であり、それゆえ全てのε>0に対して、次を満たすコンパクトセットFε∩Kが存在する。
P(A)≤P(Fε∩K)+2εFε∩K⊂A
したがって、全てのA∈B(S)に対しても$\displaystyle P(A) = \sup_{ K : \text{compact set}} \left\{ P(K) : K \subset A \right\}
(⇐)
\Omega \in \mathcal{B}(S)$について
1=P(Ω)=K:compact setsup{P(K):K⊂Ω}
したがって、ε>0が何であれP(K)>1−εを満たすコンパクトセットKは存在する。
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参照