分離ベクトル
定義1
原点から観察点までのベクトルを分離ベクトルseparation vectorという。
$$ \bcR = \mathbf{r} - \mathbf{r}^{\prime} $$
説明
- 原点ベクトルsource vector $\mathbf{r}^{\prime}$: 電荷や電流が存在する場所。つまり、電磁場を生成する起源の座標を表すベクトル。
- 位置ベクトルposition vector $\mathbf{r}$: 電場 $\mathbf{E}$や磁場 $\mathbf{B}$を測定する場所の座標を表すベクトル。
- 分離ベクトル $\bcR$: 位置ベクトルと原点ベクトル(起源ベクトル)の差。
分離ベクトルの表示には標準がなく、ばらばらである。記号を特に定めずに$\mathbf{r} - \mathbf{r}^{\prime}$と書く場合もある。エビ寿司屋では、グリフィスの電磁気学と同様に、筆記体$r$(Kaufmannフォント) $\bcR$で表示する。その他に使用される文字には、ギリシャ文字のエータ$\eta$などがある。分離ベクトルの大きさと単位ベクトルは次のとおりである。
$$ \left| \bcR \right| = \cR = \left| \mathbf{r} - \mathbf{r}^{\prime} \right| $$
$$ \crH = \dfrac{\bcR}{\cR} = \dfrac{\mathbf{r} - \mathbf{r}^{\prime}}{ \left| \mathbf{r} - \mathbf{r}^{\prime} \right|} $$
直交座標系では、以下のようになる。
$$ \bcR = (x-x^{\prime})\hat {\mathbf{x}} + (y-y^{\prime})\hat{\mathbf{y}} + (z-z^{\prime})\hat{\mathbf{z}} $$ $$ \cR = \sqrt{ (x-x^{\prime})^2 + (y-y^{\prime})^2 + (z-z^{\prime})^2 } $$ $$ \crH = \dfrac{ (x-x^{\prime})\hat {\mathbf{x}} + (y-y^{\prime})\hat{\mathbf{y}} + (z-z^{\prime})\hat{\mathbf{z}}}{\sqrt{ (x-x^{\prime})^2 + (y-y^{\prime})^2 + (z-z^{\prime})^2 }} $$
例
原点(2,8,7)から観察点(4,6,8)までの分離ベクトル$\bcR$を求めなさい。また、その大きさと単位ベクトルを求めなさい。
$$ \bcR=(4,6,8)-(2,8,7)=(2,-2,1)=2\hat{\mathbf{x}} -2\hat{\mathbf{y}}+\hat{\mathbf{z}} $$
$$ \cR=\sqrt{ 2^2+ (-2)^2+1^2}=\sqrt{4+4+1}=\sqrt{9}=3 $$
$$ \crH=\left( \dfrac{2}{3}, - \dfrac{2}{3},\dfrac{1}{3} \right) = \dfrac{2}{3}\hat{\mathbf{x}} -\dfrac{2}{3}\hat{\mathbf{y}}+\dfrac{1}{3}\hat{\mathbf{z}} $$
デイビッド・J・グリフィス, 『基礎電磁気学』(金進丞 訳)(第4版). 2014, p9-10 ↩︎