logo

一様に可積分なマルチンゲールはL1収束マルチンゲールである 📂確率論

一様に可積分なマルチンゲールはL1収束マルチンゲールである

定義

確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ が与えられているとしよう。確率過程 $\left\{ X_{n} \right\}$ が何らかの確率変数 $X_{\infty}$ に対して次を満たす場合、$\left\{ X_{n} \right\}$ は $X_{\infty}$ に $\mathcal{L}_{p}$ 収束すると言われる。 $$ \lim_{n \to \infty} \| X_{n} - X_{\infty} \|_{p} = 0 $$ 確率過程 $\left\{ X_{n} \right\}$ が $\mathcal{L}_{p}$ 収束する場合、マルチンゲール $\left\{ ( X_{n} , \mathcal{F}_{n} ) \right\}$ が $\mathcal{L}_{p}$ 収束すると言われる。

定理

マルチンゲール $\left\{ ( X_{n} , \mathcal{F}_{n} ) \right\}$ が 一様可積分である場合、$\mathcal{L}_{1}$ 収束する。

説明

測度論の感覚から見れば、$p=1$ での収束が大した意味を持たないかもしれないけど、統計学の視点からは、この程度の収束でも十分であるかもしれない。

証明

$$ \begin{align*} \int_{\Omega} |X_{n}| dP =& \int_{(|X_{n}| \le k)} |X_{n}| dP + \int_{(|X_{n}| > k)} |X_{n}| dP \\ \le & k P (|X_{n}| \le k) + \int_{(|X_{n}| > k)} |X_{n}| dP \\ \le & k+ \int_{(|X_{n}| > k)} |X_{n}| dP \end{align*} $$ $\left\{ ( X_{n} , \mathcal{F}_{n} ) \right\}$ が一様可積分であるとは、全ての $\varepsilon > 0$ に対して次を満たす $k \in \mathbb{N}$ が存在することを意味する。 $$ \sup_{ n \in \mathbb{N} } \int_{ \left( \left| X_{n} \right| \ge k \right) } \left| X_{n} \right| dP < \varepsilon $$ よって、上で得られた式の両辺に $\displaystyle \sup_{n \in \mathbb{N}}$ を取ると $$ \begin{align*} \sup_{n \in \mathbb{N}} \int_{\Omega} |X_{n}| dP \le & k + \sup_{n \in \mathbb{N}} \int_{ \left( \left| X_{n} \right| \ge k \right) } \left| X_{n} \right| dP \\ <& k + \varepsilon \\ <& \infty \end{align*} $$ これを整理すると $\displaystyle \sup_{n \in \mathbb{N}} E | X_{n} | < \infty$ を得る。

サブマルチンゲール収束定理: 確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ とサブマルチンゲール $\left\{ ( X_{n} , \mathcal{F}_{n} ) \right\}$ が与えられているとしよう。

$\displaystyle \sup_{n \in \mathbb{N}} E X_{n}^{+} < \infty$ とすると、$X_{n}$ はほぼ確実にある確率変数 $X_{\infty}: \Omega \to \mathbb{R}$ に収束する。 $$E X_{\infty} < E X_{\infty}^{+} < \infty$$

$\displaystyle \sup_{n \in \mathbb{N}} E X_{n}^{+} \le \sup_{n \in \mathbb{N}} E | X_{n} | < \infty$ そしてマルチンゲールはサブマルチンゲールだから、サブマルチンゲール収束定理により、確率過程 $\left\{ X_{n} \right\}$ はほぼ確実にある確率変数 $X_{\infty}$ に収束する。さらに、ほぼ確実に収束する場合、確率収束するので、$X_{n} \overset{P}{\to} X_{\infty}$ と同様に記述できる。

20191028\_102403.png

ヴィタリ収束定理: 測度空間 $( X , \mathcal{E} , \mu)$ が与えられているとしよう。

$1 \le p < \infty$ の時、関数のシーケンス $\left\{ f_{n} \right\}_{n \in \mathbb{N}} \subset \mathcal{L}^{p}$ が $f$ に $\mathcal{L}_{p}$ 収束することは、以下の三つ全てを満たすことが必要十分条件である。

  • (i): $\left\{ f_{n} \right\}$ は $f$ に測度収束する。
  • (ii): $\left\{ | f_{n} |^{p} \right\}$ は一様可積分である。
  • (iii): 全ての $\varepsilon > 0$ に対して $$ F \in \mathcal{E} \land F \cap E = \emptyset \implies \int_{F} | f_{n} |^{p} d \mu < \varepsilon^{p} \qquad \forall n \in \mathbb{N} $$ を満たし、$\mu (E) < \infty$ である $E \in \mathcal{E}$ が存在する。

確率 $P$ は 有限測度であり、条件 (iii)を自明に満たす。さらに、仮定で $p=1$ について $\left\{ X_{n} \right\}$ が一様可積分であるため、条件 (ii)を満たし、確率収束は測度収束を意味するので、$X_{n} \overset{P}{\to} X_{\infty}$ は $X_{n}$ が $X_{\infty}$ に測度収束するということを意味し、条件 (i)を満たす。ヴィタリ収束定理$(\Leftarrow)$ により、$\left\{ X_{n} \right\}$ は $\mathcal{L}_{1}$ 収束するし、一様可積分マルチンゲール $\left\{ ( X_{n} , \mathcal{F}_{n} ) \right\}$ は $\mathcal{L}_{1}$ 収束するマルチンゲールである。