複素測度、ベクトル測度
定義1
$(X,\mathcal{E})$を可測空間とする。以下の条件を満たす関数$\nu : \mathcal{E} \to \mathbb{C}$を$(X,\mathcal{E})$上の複素測度またはベクトル測度と呼ぶ。
- (a) $\nu (\varnothing) = 0$
- (b) 互いに素な$E_{j} \in \mathcal{E}$に対して、 $$ \nu \left( \bigcup \limits_{j=1}^\infty E_{j} \right) = \sum \limits_{1} ^\infty \nu (E_{j}) $$
説明
(b) は加算加法性を意味する。複素測度は、測度、符号測度とは異なり、拡張実数値を持たないように定義されている。これは、どの方向でも無限大の値を取ることができるからである。したがって、有限な符号測度は複素測度である。複素測度$\nu$は、以下のように実部と虚部に分けることができる。
$$ \begin{align*} \nu (E) &= \nu_{r} (E) + i \nu_{i} (E) \\ \nu_{r} (E) &= \text{Re} \big( \nu (E) \big) \\ \nu_{i} (E) &= \mathrm{Im} \big( \nu (E) \big) \end{align*} $$
すると$\nu_{r}$、$\nu_{i}$は実数値を持つ符号測度になる。積分については、次のように自然に拡張が可能である。
$$ L^1(\nu) \iff L^1(\nu_{r}) \cap L^1 (\nu_{i}) \\ \int f d\nu=\int f d\nu_{r} + i\int f d\nu_{i}\quad \mathrm{for} f\in L^1(\nu) $$
また、二つの複素測度$\nu$、$\mu$が互いに特異である場合、それぞれの実部、虚部がそれぞれ特異であると定義する。
$$ \nu \perp \mu \iff \nu_{a} \perp \mu _{b} \quad \mathrm{for} a,b=r,i $$
同様に、$\lambda$を符号測度とする場合、$\nu_{r}$、$\nu_{i}$がそれぞれ$\lambda$に対して絶対連続であれば、複素測度$\nu$が$\lambda$に対して絶対連続であると言う。
参照
Gerald B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications (2nd Edition, 1999), p93 ↩︎