ジョルダン分解定理
定理
可測空間 $(X,\mathcal{E})$とそれに定義された符号付き測度 $\nu$が与えられたとしよう。すると、以下の条件を満たす二つの正の測度 $\nu^{+}$、$\nu^{-}$が唯一存在し、$\nu=\nu^{+}-\nu^{-}$を$\nu$のジョルダン分解Jodan decompositionと呼ぶ。
$$ \nu=\nu^{+}-\nu^{-} $$
ここで、$X=P \cup N$を分解と呼ぶと、$\nu^{+}, \nu^{-}$は以下の通りである。
$$ \begin{align*} \nu^{+} (E) &= \nu ( E \cap P) \\ \nu^{-}(E) &= -\nu (E \cap N) \end{align*} $$
証明
パート1. 存在性
可測空間 $(X,\mathcal{E})$とそれに定義された符号付き測度 $\nu$が与えられたとする。すると、分解の定理によって、$\nu$に対して$X=P \cup N$、$P\cap N=\varnothing$を満たす正集合 $P$と負集合 $N$が存在する。以下のように正の測度 $\nu^{+}$、$\nu^{-}$を定義しよう。
$$ \begin{align*} \nu^{+} (E) &:= \nu (E \cap P) \\ \nu^{-}(E) &:= -\nu (E\cap N) \end{align*} \quad \forall\ E\in\mathcal{E} $$
すると、$P\cup N=X$であるため、以下が自明に成立する。
$$ \nu (E)=\nu (E\cap P)+\nu (E \cap N)=\nu^{+} (E) -\nu^{-} (E) $$
また、$E_{1} \subset P$、$E_2 \subset N$とすると、全ての$E_{1}$は$\nu^{-}$に対して零集合であり、全ての$E_2$は$\nu^{+}$に対して零集合である。したがって、$P$は$\nu^{-} -\mathrm{null}$であり、$N$は$\nu^{+} -\mathrm{null}$である。従って、$\nu^{+} \perp \nu^{-}$である。
パート2. 一意性
$\mu^+$、$\mu^-$を上記内容を満たす$\nu^{+}$、$\nu^{-}$とは異なる二つの正の測度とする。
$$ \nu=\mu^+ - \mu^- $$
そして、$E,\ F \in \mathcal{E}$が$\mu^+\perp \mu^-$を満たす二つの集合を仮定する。
$$ \mu (E\cap N)=\mu^-(E)=0=\mu^+(F)=\mu (F\cap P) $$
$$ E \cup F=X \quad \text{and} \quad E\cap F = \varnothing $$ 上記二条件により、$X=E\cup F$は別の分解であることが分かる。ここで、$E$が正集合、$N$が負集合である。そうすると、分解の定理により、$ (P-E)\cup (E-P)$は$\nu$に対する零集合である。従って、任意の$A \in \mathcal{E}$に対して、以下が成立する。
$$ \mu^+(A)=\mu^+ (A\cap E)=\nu (A\cap E)=\nu (A \cap P)=\nu^{+}(A) $$
同様に、以下の式が成立する。
$$ \mu^-(A)=\mu^- (A\cap F)=\nu (A\cap F)=\nu (A \cap N)=\nu^{-}(A) $$
従って、ジョルダン分解定理を満たす二つの正の測度は一意である。
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