符号付き測度
定義1
$(X, \mathcal{E})$を可測空間だとしよう。以下の条件を満たす拡張実数値関数$\nu : \mathcal{E} \to \overline{\mathbb{R}}$を符号付き測度signed measureという。
- $\nu ( \varnothing ) = 0$
- $\pm \infty$の中で高々1つだけが$\nu$の関数値になれる。つまり、$-\infty \in \nu (\mathcal{E})$ならば$+\infty \notin \nu (\mathcal{E})$であり、$+\infty \in \nu (\mathcal{E})$ならば$-\infty \notin \nu (\mathcal{E})$である。
- $\left\{E_{j}\right\}$を$\mathcal{E}$で互いに素な集合の数列としよう。すると$\nu \left( \bigcup \nolimits_{j=1}^\infty E_{j} \right) =\sum \limits_{j=1}^\infty \nu (E_{j})$を満たす。この時$\nu (\cup _{1}^\infty E_{j})$が有限の場合、右辺の和は絶対収束する。
説明
簡単に言うと、負の値も取れるように一般化された測度である。従って測度だったら符号付き測度でもある。測度と符号付き測度を一緒に言及する際は強調のために測度を正の測度positive measureと呼ぶこともある。符号付き測度の具体的な例にはリーマン積分がある。
一方で、測度は常に0以上の関数値を持たなければならないため、任意の関数のリーマン積分に絶対値を取ったものと考えることができる。また、全ての符号付き測度は2つの測度の差で表現可能である。
$$ \nu = \mu_{1} -\mu_2 $$
性質
$\nu$を可測空間$(X,\mathcal{E})$で定義された符号付き測度としよう。
下からの連続性:
$\left\{ E_{j} \right\}_{1}^\infty \subset \mathcal{E}$が単調増加数列だとしよう。つまり$E_{1} \subset E_2 \subset \cdots$。すると以下が成り立つ。 $$ \mu\left( \bigcup \nolimits _{1}^\infty E_{j} \right)= \lim \limits_{j\rightarrow \infty} \mu (E_{j}) $$
上からの連続性:
$\left\{ E_{j} \right\}_{1}^\infty \subset \mathcal{E}$が単調減少数列だとしよう。つまり$E_{1} \supset E_2 \supset \cdots$。そして$\mu (E_{1})<\infty$としよう。すると以下が成り立つ。 $$ \mu\left(\bigcap \nolimits _{1}^\infty E_{j} \right)= \lim \limits_{j\rightarrow \infty} \mu (E_{j}) $$
基本的には測度での証明方法1と同じである。測度の文脈での証明には可算加法性が必要だったが、符号付き測度にも可算加法性があるため、証明方法は同じである。従って省略する。