測度論で定義される期待値
定義 1
確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ が与えられているとする。確率変数 $X$ に対して次のように定義される $E(X)$ を**$X$ の(数理的)期待値**という。 $$ E(X) := \int_{\Omega} X d P $$
- 測度論にまだ触れていなければ、確率空間という言葉は無視しても良い。
説明
期待値の定義は、測度論が使われていると言っても、簡潔に書かれた式だけでは理解しにくいのは事実だ。これに対して、以下の二つの定理を用いると、我々が馴染みのある形に変換することができる。
- [1] 与えられた確率変数 $X : \Omega \to \mathbb{R}$ に対して $$ \int_{\Omega} g( X ( \omega )) d P (\omega ) = \int_{\mathbb{R}} g(x) d P_{X} (x) $$
- [2] 密度 $f_{X} , g : \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}$ が $\mathbb{R}^{n}$ で定義された絶対連続な $P_{X}$ に対して積分可能であれば $$ \int_{\mathbb{R}^{n}} g(x) d P_{X} (x) = \int_{\mathbb{R}^{n}} f_{X} (x) g(x) dx $$
そうすると$g(X)$ の期待値は、[2]で $n=1$ とすると $$ \begin{align*} E(g(X)) =& \int_{\Omega} g(X) d P \\ =& \int_{\Omega} g( X ( \omega )) d P (\omega ) \\ =& \int_{\mathbb{R}^{1}} g(x) d P_{X} (x) \\ =& \int_{\mathbb{R}} g(x) f_{X} (x) dx \end{align*} $$ これは測度論を導入しても $\displaystyle E(g(X)) = \int_{-\infty}^{\infty} g(x) f_{X} (x) dx $をただの定義として受け入れるのではなく、導出可能であるという意味になる。特に[1]で $g(x) = x$ であれば、上で紹介した期待値と同じになる。
参照
Capinski. (1999). Measure, Integral and Probability: p114. ↩︎