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動力学における固定点の双曲線性 📂動力学

動力学における固定点の双曲線性

定義 1

空間 $\mathbb{R}^{p}$ と スムーズ関数 $f , g : \mathbb{R}^{p} \to \mathbb{R}^{p}$ に関して 動力学系 が次のように ベクトル場マップとして表されるとする。 $$ \dot{x} = f(x) \\ x \mapsto g(x) $$ これらの 固定点 $\overline{x}$ で得た ヤコビ行列固有値 を $\lambda_{1} , \cdots , \lambda_{p}$ と表す。

  1. ベクトル場 $f$ であるか、マップ $g$ であるかに応じて、以下のように三つの乗数multiplier $n_{-}, n_{0}, n_{+}$を定義する。 $$ f: \begin{align*} n_{-} =& \operatorname{card} \left\{ k : \operatorname{Re} \lambda_{k} < 0 \right\} \\ n_{0} =& \operatorname{card} \left\{ k : \operatorname{Re} \lambda_{k} = 0 \right\} \\ n_{+} =& \operatorname{card} \left\{ k : \operatorname{Re} \lambda_{k} > 0 \right\} \end{align*} $$ $$ g: \begin{align*} n_{-} =& \operatorname{card} \left\{ k : \left| \lambda_{k} \right| < 1 \right\} \\ n_{0} =& \operatorname{card} \left\{ k : \left| \lambda_{k} \right| = 1 \right\} \\ n_{+} =& \operatorname{card} \left\{ k : \left| \lambda_{k} \right| > 1 \right\} \end{align*} $$ ここで $\operatorname{Re}$ は 複素数の実部、 $\left| \cdot \right|$ は複素数のモジュラス、 $\operatorname{card}$ は 集合の基数を意味する。
  2. $n_{0} = 0$ である場合、固定点 $\overline{x}$ は双曲的(ハイパボリック)hyperbolicだと言う。
  3. $n_{-} n_{+} \ne 0$ である場合、その双曲的固定点を双曲的鞍点(サドル)saddleと呼ぶ。

説明

連続的なシステムでは、 $\lambda_{k}$ の実部を $0$ と比較し、離散的なシステムでは $\lambda_{k}$ の大きさを $1$ と比較することに注意しよう。

視覚的に理解しやすいように2次元で双曲的固定点の典型的な フェーズポートレート を見てみると次のようになる。

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このように、双曲的固定点は 複素数固有値 を見るだけでも大まかな性質を推測でき、多くの場合「比較的把握しやすい点」または「特徴が無く包括的genericな点」と見られる。

  • 固有値が実数ではなく複素数であることは、周囲の軌道に回転があることを示唆する。
  • 全ての固有値が複素平面の左側に位置することは、周囲の点が固定点に近づくことを示唆する。
  • 全ての固有値が複素平面の右側に位置することは、周囲の点が固定点から遠ざかることを示唆する。
  • 全ての固有値が複素平面の左側または右側のどちらか一方にだけ位置しないことは、安定マニホールドと不安定マニホールドを少なくとも一つずつ持つことを意味するため、鞍点になる。

上記で扱っていない例として、実部が $0$、つまり全ての $\lambda_{k}$ が純虚数である場合、周囲の点が近づいたり遠ざかったりすることはなく、その固定点は双曲的ではなく楕円的(エリプティック)ellipticだと言い、センター と呼ばれる。

参照


  1. Kuznetsov. (1998). Elements of Applied Bifurcation Theory: p46~50. ↩︎