階段ポテンシャルに対するシュレーディンガー方程式の解
📂量子力学階段ポテンシャルに対するシュレーディンガー方程式の解
概要

ポテンシャルが上の図のように階段関数であるとき、粒子がどのように運動するかを調べてみよう。ポテンシャルUは
U(x)={0U0x<0x>0
ポテンシャルがU(x)であるときの時間に無関係なシュレーディンガー方程式は
dx2d2u(x)+ℏ22m[E−U(x)]u(x)=0
解法
E<0
エネルギーがポテンシャルより小さい場合、解が存在しないため考慮する必要はない。
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0<E<U0
Part 2-1. x<0
この領域でのシュレーディンガー方程式は次のようになる。
dx2d2u+ℏ22mEu=0
ℏ22mEが正なので、k2で置き換えると
dx2d2u+k2u=0
これは非常に簡単な2階常微分方程式である。微分方程式を解くと、その解は次のようになる。
uI(x)=A+eikx+A−e−ikx
ここで、A+、A−は定数だ。ここで、u=A+eikxは入射波、A−e−ikxは反射波である。
Part 2-2. x>0
この領域でのシュレーディンガー方程式は次の通り。
dx2d2u+ℏ22m(E−U0)u=0
E−U0<0なので、ℏ22m(E−U0)=−κ2で置き換えると
dx2d2u−κ2u=0
ここで、κはギリシャ文字の「カパ」だ。k(ケイ)とは違う文字だ。この微分方程式の解は次の通り。
uII(x)=B+eκx+B−e−κx
波動関数は二乗積分可能である必要があるので、x→∞limuII(x)=0でなければならない。ところが、x→∞limB+eκx=∞なので、B+=0でなければならない。したがって、透過波はutrans=B−e−κx。
Part 2-3. 境界条件
波動関数は滑らかだと仮定するので、x=0では連続しており、波動関数の微分(勾配)もx=0で連続している。したがって次の条件が得られる。
uI(0)=uII(0)⟹uI′(0)=uII′(0)⟹A++A−=B−ikA+−ikA−=−κB−
二つの式を連立させると次のようになる。
A+A−=ik−κik+κ
Part 2-4. 反射率と透過率
反射率と透過率を計算するために、入射波、反射波、透過波の確率流を求めてみると
jinc=mℏk∣A+∣2,jref=mℏk∣A−∣2,jtrnas=0
したがって、反射率、透過率は
R=jincjref=A+A−2=κ2+k2κ2+k2=1
T=jincjtrnas=mℏk∣A+∣20=0
上の結果により、反射のみが起こり、透過は起こらないという事実が分かる。しかし、厳密にはB−=0なので、x>0で粒子が発見される確率が存在する。つまり、巨視的に見ると入射した波動は全て反射されたと見なせるが、微視的に見ると入射波の一部が古典的には不可能な領域に透過したことになる。これをトンネル効果tunnelingまたは量子トンネル効果quantum tunnel effectという。
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U0<E
Part 3-1. x<0
この領域での時間に無関係なシュレーディンガー方程式は
dx2d2u+ℏ22mEu=0
ℏ22mEが正なので、k2で置き換えると
dx2d2u+k2u=0
上記の式は**Part 2-1.**で既に解いたので、解を知っている。
uI(x)=A+eikx+A−e−ikx
入射波はuinc=A+eikx、反射波はuref=A−e−ikx。
Part 3-2. x>0 この領域での時間に無関係なシュレーディンガー方程式は
dx2d2u+ℏ22m(E−U0)u=0
E−U0>0なので、ℏ22m(E−U0)=κ2で置き換えると
dx2d2u+κ2u=0
**Part 3-1.**と同じ形なので解は
uII(x)=B+eiκx+B−e−iκx
この時、x>0領域において反射波がないのでB−=0だ。したがって
uII(x)=B+eiκx
これが透過波である。
Part 3-3. 境界条件
波動関数は滑らかだと仮定するので、x=0では連続しており、波動関数の微分(勾配)もx=0で連続している。したがって
uI(0)=uII(0)⟹A++A−=B+
uI′(0)=uII′(0)⟹ikA+−ikA−=iκB+
上記二つの式を連立させると次のようになる。
A+A−=k+κk−κ
A+B+=k+κ2k
Part 3-4. 反射率と透過率
入射波、反射波、透過波の確率流は
jinc=mℏk∣A+∣2,jref=mℏk∣A−∣2,jtrnas=mℏκ∣B+∣2
したがって、反射率、透過率は
R=jincjref=A+A−2=(k+κk−κ)2=(k+κ)2k2−kκ+κ2
T=jincjtrans=kκA+B+2=kκ(k+κ2k)2=(k+κ)22kκ
R+T=1が成り立つことは簡単に確認できる。
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