確率フロー
📂量子力学確率フロー
定義
波動関数 ψ(x,t)の確率流れprobability currentは以下のように定義される。
j(x,t):=2miℏ(ψ∗∂x∂ψ−ψ∂x∂ψ∗)(1)
公式
確率流れの変化率は確率密度の時間による変化と等しい。つまり、次の式が成り立つ。
∂t∂∣ψ(x,t)∣2=−∂x∂j(x,t)(2)
説明
実のところ、導出過程を見れば分かるように、(1)のように定義すれば(2)が成り立つのではなく、(2)が成り立つ式を(1)のように定義したというのが正確だ。波動関数の確率密度をPと表記すると、(2)は次のようになる。
∂t∂P=−∂x∂j(x,t)
粒子が区間 [a,b]の間で見つかる確率をPab=∫abPと表記すると、次のようになる。
∂t∂Pab=j(a,t)−j(b,t)
したがって、j(x,t)は時間がtの時にx地点を通過する確率の量と受け止めることができる。つまり、確率密度の流束であり、波動関数の流束である。この理由から、jを確率流れと呼ぶ。左辺は区間 [a,b]での確率の総変化量を意味し、右辺は区間 [a,b]の両端での確率変化を全て合計したものである。簡単に例えると、部屋の総人数の変化量は出入りした人の総人数と同じと考えればいい。これに似た概念として電磁気学の連続方程式がある。
∂t∂ρ=−∇
連続方程式は、電荷量の総変化は境界での変化量の合計と等しいという意味で、電荷が保存されることを示している。同様に、(2)は確率が保存されることを示している。当然ながら確率密度を全空間で積分すると1でなければならないので、どこかで値が減少すれば他の場所では値が増加しなければならない。
導出
シュレディンガー方程式から始めよう。
iℏ∂t∂ψ(x,t)=−2mℏ2∂x2∂2ψ(x,t)
両辺にψ∗を掛けると以下のようになる。
iℏψ∗∂t∂ψ=−2mℏ2ψ∗∂x2∂2ψ(3)
次にシュレディンガー方程式に複素共役を取り、ψを掛けると次のようになる。
−iℏψ∂t∂ψ∗=−2mℏ2ψ∂x2∂2ψ∗(4)
今度は(3)−(4)を計算すると以下のようになる。
iℏ[ψ∗∂t∂ψ+ψ∂t∂ψ∗]=−2mℏ2[ψ∗∂x2∂2ψ−ψ∂x2∂2ψ∗]=−2mℏ2[∂x∂(ψ∗∂x∂ψ−ψ∂x∂ψ∗)]
左辺も整理して再び表すと以下のようになる。
⟹iℏ∂t∂(ψ∗ψ)∂t∂(ψ∗ψ)=−2mℏ2∂x∂(ψ∗∂x∂ψ−ψ∂x∂ψ∗)=−2miℏ∂x∂(ψ∗∂x∂ψ−ψ∂x∂ψ∗)
ψ∗ψ=∣ψ∣2なので左辺は確率密度の時間微分である。右辺の青い部分をj(x,t)とすると、最終的に次のようになる。
∂t∂∣ψ∣2=−∂x∂j(x,t)
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