ハーン-バナッハの拡張定理
📂バナッハ空間ハーン-バナッハの拡張定理
定理
(X,∥⋅∥)をノルム空間としよう。Y⊂Xとする。そして、Yの線形汎関数y∗∈Y∗が与えられたとする。すると、以下の式を満たすXの線形汎関数x∗∈X∗が存在する。
x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
∥x∗∥X∗=∥y∗∥Y∗
説明
簡単に言うと、部分空間の双対を全空間の双対に拡張できるということだ。つまり、部分空間のすべての線形汎関数には、同じ関数値、ノルムを持つ全空間の線形汎関数が対になるものがある。また、ノルム空間XをC-ベクトル空間として扱おう。
補助定理:セミノルムに関するハーン-バナッハ定理
XはC-ベクトル空間であって、Y⊂Xとする。p:X→RをXのセミノルムとしよう。そして、以下の条件を満たすYの線形汎関数と仮定しよう。
∣y∗(y)∣≤p(y),∀y∈Y
すると、以下の条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Cが存在する。
x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
∣x∗(x)∣≤p(x),∀x∈X
証明
XとYのノルムを∥⋅∥、X∗とY∗のノルムを∥⋅∥X∗、∥⋅∥Y∗として表そう。p:X→Rが以下のように定義された関数だとしよう。
p(x)=∥y∗∥Y∗∥x∥X,x∈X
するとpは準線形であることが示される。定義により0≤pなのでpはセミノルムである。また、以下の式が成り立つ。
y∗(y)≤==≤=∣y∗(y)∣ ∥y∥∥y∥1y∗(y) ∥y∥y∗(∥y∥y)∥y∥∥y∗∥Y∗ p(y)
三行目で∥y∥は定数なので絶対値の外に出ることができ、y∗が線形なので∥y∥1が関数の中に入った。また、四行目は∥y∥y=1であり双対のノルムの定義により∥y∗∥Y∗=∥y∥≤1y∈Ysup∣y∗(y)∣なので成り立つ。したがって、補助定理を使う条件が満たされたので、以下の条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Cが存在する。
x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
∣x∗(x)∣≤p(x),∀x∈X
最初の条件は(1)と同値である。(3)により、
∣x∗(x)∣≤p(x)=∥y∗∥Y∗∥x∥
双対のノルムの定義により、
∥x∗∥X∗=∥x∥≤1x∈Xsup∥y∗∥Y∗∥x∥=∥y∗∥Y∗
したがって、(2)の条件を満たす。
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結論
1
Xがノルム空間で、x0∈Xであるとする。すると、以下の条件を満たすx∗∈X∗が存在する。
∥x∗∥X∗=1,x∗(x0)=∥x0∥
証明
Y={λ∣λx0∈R}としよう。すると、YはXの部分空間になる。今、Yの線形汎関数y∗:Y→Rを以下のように定義しよう。
y∗(y)=y∗(λx0):=λ∥x0∥,y=λx0∈Y
y∗が実際に線形になることは簡単に確認できるので省略する。y∗の定義により、
∣y∗(y)∣=λ∥x0∥=∥λx0∥=∥y∥
双対のノルムの定義により∥y∗∥Y∗=∥y∥≤1y∈Ysup∣y∗(y)∣なので、
∥y∗∥Y∗=1
また、
y∗(x0)=∥x0∥(5)
ハーン-バナッハ拡張定理により、与えられたy∗に対して∥x∗∥X∗=1=∥y∗∥Y∗であり、x∗(y)=y∗(y),∀y∈Yを満たすXの線形汎関数x∗が存在する。この時(4)、(5)により、
∥x∗∥X∗=∥y∗∥Y∗=1
x∗(x0)=y∗(x0)=∥x0∥
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2
XはC-ベクトル空間であり、Y⊂Sが共にXの部分空間であるとする。もしs∈Sがd(s,Y)=δ>0であれば、以下を満たすx∗∈X∗が存在する。
∥x∗∥X∗≤1
y∗(s)=x∗(y)= y∗(s)=δ,s∈(S∖Y) y∗(y)=0,y∈Y
d(s,Y)は点sと集合Yとの最も近い距離、つまりd(s,Y):=y∈Yinf∥s−y∥を表す。
証明
S:=Y+Cs={y+λs:y∈Y,λ∈C}
とすると、S⊂Xである。関数y∗:S→Cを
y∗(y+λs):=λδ
のように定義すると、y∗は当然線形性を持つ。今、y∗が関数であるか確認しよう。y1+λ1s=y2+λ2sとし、λ1=λ2と仮定すると、y1−y2=(λ2−λ2)sなのでs=λ2−λ11(y1−y2)であり、Yはベクトル空間なので加法に閉じていなければならないため、s∈Yでなければならない。しかし、これはd(s,Y)>0と矛盾するのでλ1=λ2でなければならない、
y∗(y1+λ1s)=λ1δ=λ2δ=y∗(y2+λ1s)
したがって、y∗は関数としてうまく定義される。すべてのy+λs∈Sに対して、
∣y∗(y+λs)∣====≤ ∣λδ∣ ∣λ∣d(s,Y) ∣λ∣y∈Yinf∥s−y∥ ∥s−λy∥∥y+λs∥
よって、y∗は有界で、特に∥y∗∥≤1である。y∗:S→Cが有界線形関数であり、ハーン-バナッハ定理により、すべてのs∈Sに対して、x∗(s)=y∗(s)を満たすx∗∈X∗が存在する。一方、y∗の定義からλ=0を代入すると、y∗(y+0s)=0なので、すべてのy∈Yに対して、
y∗(y)=x∗(y)=0
また、y∗は線形なので、
y∗(s)=y∗(y)+1y∗(s)=y∗(y+1s)=1δ
つまり、s∈(S∖Y)に対して、
y∗(s)=x∗(s)=δ
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付録
付録1
x1,x2∈Xで、λ∈Cとする。すると、
p(x1+x2)=≤== ∥y∗∥Y∗∥x1+x2∥∥y∗∥Y∗(∥x1∥+∥x2∥) ∥y∗∥Y∗∥x1∥+∥y∗∥Y∗∥x2∥ p(x1)+p(x2)
p(λx1)=== ∥y∗∥Y∗∥λx1∥ ∣λ∣∥y∗∥Y∗∥x1∥ ∣λ∣p(x1)
よって、pは準線形である。
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付録2
Xがベクトル空間であるので、Xの要素に定数をかけたものはやはりXの要素である。したがって、YはXの部分集合である。部分集合Yが部分空間になるためには、加法とスカラー倍に関して閉じていることを示す必要がある。y1=λ1x0∈Y、y2=λ2x0∈Y、λ1,λ2,k∈Rであり、λ1+λ2=λ3∈R、kλ1=λ4∈Rとする。すると、
y1+y2=λ1x0+λ2x0=λ3x0∈Y
ky1=k(λ1x0)=(kλ1)x0=λ4x0∈Y
したがって、YはXの部分空間である。
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