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拡張自己相関関数 📂統計的分析

拡張自己相関関数

ビルドアップ

PACF$AR(p)$の次数を、ACF$MA(q)$の次数を決める時に大きな助けとなる。しかし、$ARMA(p,q)$モデルを適用する際は、アルマモデルの可逆性のために、$AR(p)$が$MA(\infty)$のように見えたり、$MA(q)$が$AR(\infty)$のように見えたりすることがある。そこで、このような問題を回避し、アルマモデルを見つけるためのいくつかの方法が考案された。

定義

拡張自己相関関数はその中の一つの方法で、次のように定義される$W_{t,k,j}$に対する時差$k$と$j$のEACFと言う。 $$ W_{t,k,j} := Y_{t} - \tilde{\phi}_{1} Y_{t-1} - \cdots - \tilde{\phi}_{k} Y_{t-k} $$

説明

この定義だけではEACFを理解することが不可能なため、数式で理解しよう。与えられた$k$、$j$に対してアルマモデル$ARMA(k,j)$は次のように表現される。 $$ Y_{t} = \sum_{i = 1}^{k} \phi_{i} Y_{t-i} + e_{t} - \sum_{i = 1}^{j} \theta_{i} e_{t-i} $$ ここで、$Y_{t}$を$Y_{t-1} , \cdots , Y_{t-k}$で多重回帰分析すると、$\phi_{1} , \cdots , \phi_{k}$の推定値である回帰係数$\tilde{\phi}_{1} , \cdots , \tilde{\phi}_{k}$を得ることができる。そして、その残差は次のようにメチャクチャになる。 $$ Y_{t} - \sum_{i = 1}^{k} \tilde{\phi}_{i} Y_{t-i} = e_{t} - \sum_{i = 1}^{j} \theta_{i} e_{t-i} $$ しかし、よく考えてみると、左辺を上で定義した$W_{t,k,j}$としておくことで、$MA(j)$モデルを得ることができる。 $$ W_{t,k,j} = e_{t} - \sum_{i = 1}^{j} \theta_{i} e_{t-i} $$ すると、$W_{t,k,j}$はACFがそうであったように正規分布$\displaystyle N \left( 0 , {{1} \over {n - k - j}}\right)$に従い、これを利用して仮説検定を行う。

この展開を簡単に言うと、複雑に絡み合ったアルマモデル$ARMA(k,j)$で時差$k$を与えて$AR(k)$を取り除き、そこから時差$j$を与えて$MA(j)$だけを考えて各個撃破することである。最終的にACFを使用しなければならないため、拡張自己相関関数という名前がついたのは適切だと言える。

実習

20190724\_150509.png

時差が二つの軸に列挙されているため、ACFPACFと違い、コレログラムは描けず1、OとXで帰無仮説を棄却したか否かだけを示すテーブルを使用する。ただし、このテーブルは実際のデータから得られたものではなく、分析がうまくいく$ARMA(1,1)$モデルについて分析した場合に出てくるべき理論的な図示に過ぎない。実際にこんなにキレイに出てくれることはほとんどない。

テーブルの読み方は次の通りである:

  • ステップ1. 左上から右へ水平に続く線がある頂点を見つける。
  • ステップ2. 頂点から右下に落ちて水平線と鋭角をなす線を見つける。
  • ステップ3. 両線を見つけたら、その頂点に対応する$ARMA(p,q)$で分析を試みる。

この方法に従えば、その図では頂点O*に対応する$ARMA(1,1)$がモデルの候補となる。時系列をある程度まっすぐに勉強し、説明をよく読んだなら推測できるだろうが、実際の分析ではかなり主観的で曖昧なケースが多い。これについては、実際に分析をたくさんやってみて慣れるしかない。

参照


  1. 実際には3次元で描くことができるが、見にくいため使わない。分析者は、信頼区間を外れるか否かだけを確認すれば十分である。 ↩︎