バックプロジェクション:ラドン変換のデュアル
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定義
Radon変換 R:L2(Rn)→L2(Zn)のデュアルオペレーター R#:L2(Zn)→L2(Rn)をバックプロジェクションback projection, 背景投影という。
⟨Rf,g⟩L2(Zn)=⟨f,R#g⟩L2(Rn)
ここで Zn:=R1×Sn−1はRn+1のユニットシリンダーだ。
定理
式
バックプロジェクションは具体的に以下の通りだ。
R#g(x)=∫Sn−1g(x⋅θ,θ)dθ
特に二次元では、
R#g(x,y)=∫02πg(xcosθ+ysinθ,θ)dθ
Radon変換のバックプロジェクション
次の式が成立する。
R#Rf=Sn−2∣x∣1∗f
ここで ∗はコンボリューション、Sn−1はn次元の球の表面積である。特に二次元では、
R#Rf=∣x∣2∗f
説明
バックプロジェクションはRadon変換のデュアルなので、Radon逆変換の候補として考えられる。しかしRadon変換はユニタリーではないので、以下が成立しない。
R−1=R#
二番目の定理を見ると、R#Rfはfに似ているが、同じではないことがわかる。実際に計算してみると、元の画像をブラー(blur)処理したように見える。

したがって、fを正確に得るためには、フィルターの役割をする別のオペレーターを通過しなければならず、このようなRadon逆変換をfiltered back projectionという。
幾何学的意味と視覚化
理解のために、2次元を考えよう。Radon変換のバックプロジェクションは以下の通りだ。
R#Rf(x)= ∫02πRf(x⋅θ,θ)dθ,θ=(cosθ,sinθ)
ここでRf(x⋅θ,θ)は、fを原点からx⋅θだけ離れており、θに垂直な線lx⋅θ,θに沿って線積分したものである。この線はθに垂直な角度で点xを通る線である。

しかし、バックプロジェクションは、値Rf(x⋅θ,θ)を全てのθ∈[0,2π)に対して足し合わせる(積分する)ので、R#Rf(x)は点xを通る全ての線に対するfの線積分の平均(2πで割る)となる。

以下の画像は、R#Rf(x)を計算する際に、Rf(x⋅θ,θ)の値をθ=0から累積して足していく過程を示している。


証明
式
⟨Rf,g⟩L2(Zn)=== ∫R∫Sn−1Rf(s,θ)g(s,θ)dθds ∫R∫Sn−1∫Rf(sθ+tθ⊥)dtg(s,θ)dθds ∫R∫R∫Sn−1f(sθ+tθ⊥)g(s,θ)dθdsdt
sθ+tθ⊥=xで置き換えると、s=x⋅θとなり、次が成立する。
⟨Rf,g⟩L2(Zn)=== ∫Rn∫Sn−1f(x)g(x⋅θ,θ)dθdx ∫Rnf(x)(∫Sn−1g(x⋅θ,θ)dθ)dx ⟨f,(∫Sn−1g(⟨⋅,θ⟩,θ)dθ)⟩L2(Rn)
したがって、
R#g(x)=∫Sn−1g(x⋅θ,θ)dθ
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Radon変換のバックプロジェクション
R#Rf(x)== Sn−1∫Rf(x⋅θ,θ)dθ Sn−1∫y⋅θ=0∫f((x⋅θ)θ+y)dydθ
ここで(x⋅θ)θ=x−(x⋅θ⊥)θ⊥で、二番目の項はy⋅θ=0のyに含まれているので、上の積分は次の通りである。
R#Rf(x)= Sn−1∫y⋅θ=0∫f(x+y)dydθ
補助定理
Sn−1∫y⋅θ=0∫f(x+y)dydθ=Sn−2Rn∫∣x−y∣f(y)dy
それにより、補助定理により、
R#Rf(x)=Sn−2Rn∫∣x−y∣f(y)dy=Sn−2∣x∣1∗f
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