任意の関数を二つの非負の関数として表す方法
📂測度論任意の関数を二つの非負の関数として表す方法
定義
関数f:X→Rに対してf+とf−を以下のように定義しよう。
f+(x)f−(x):=max{f(x), 0}:=max{−f(x), 0}
f+をfの正の部分positive partといい、f−をfの負の部分negative partという。
説明
名前のせいで混乱するかもしれないが、f+とf−は両方とも非負non negativeの関数だ。これらがなぜ正の部分や負の部分と呼ばれるのか、定義だけではピンとこないかもしれない。以下の図を見よう。

図を見ればわかるが、正の部分f+は正確にfの値が正の部分を表し、f−はfの値が負の部分を(正として)表す。上の定義により、以下の式が成り立つことは簡単にわかる。
f=f+−f−,∣f∣=f++f−
f+=21(∣f∣+f),f−=21(∣f∣−f)
定理
(1)
三つの関数f,g,h:X→Rが以下の条件を満たすとする。
f(x)=g(x)−h(x),min{g(x), h(x)}≥0 ∀ x∈X
すると、次の式が成り立つ。
f+(x)≤g(x),f−(x)≤h(x)∀ x∈X
任意の関数を非負の二つの関数の差として表すとき、fの正の部分f+とfの負の部分f−がそれを満たす最小の関数となるという意味だ。
(2)
fが可測関数ならば、f±も可測である。
証明
(1)
任意のxに対してf(x)=g(x)−h(x)であり、h(x)≥0なのでf(x)≤g(x)である。また、仮定により0≤g(x)である。g(x)がf(x)と0の両方よりも大きいか等しいため、二つのうち大きい方よりも大きいか等しい。したがって、次が成り立つ。
f+(x)=max{f(x),0}≤g(x)
任意のxに対して−f(x)=h(x)−g(x)であり、g(x)≥0なので−f(x)≤h(x)である。また、仮定により0≤h(x)である。h(x)が−f(x)と0の両方よりも大きいか等しいため、二つのうち大きい方よりも大きいか等しい。したがって、次が成り立つ。
f−(x)=max{−f(x),0}≤h(x)
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参照