非線形一次微分方程式の境界の線形化
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非線形1次微分方程式の特性方程式を簡単に解く方法の一つに、定義域$\Omega$の境界である$\partial \Omega$の小さい部分$\Gamma$を直線にすることがある。これは常に可能であるので、境界上の点$x^{0}$の近くでは、最初から境界が直線だと仮定して問題にアプローチすることができる。これを境界の直線化という。
$\Omega \subset \mathbb{R}^{n}$を開集合とし、$\partial \Omega$を$C^{2}$とする。そして、偏微分方程式$F \in C^{1}(\mathbb{R}^{n} \times \mathbb{R} \times \bar \Omega)$が与えられたとする。また、次のような境界条件が与えられたとする。
$$ \begin{equation} \left\{ \begin{aligned} F(Du,\ u,\ x)&=0 && \text{in } \Omega \\ u&=g && \text{on } \Gamma \end{aligned} \right. \end{equation} $$
このとき$\Gamma \subset \partial \Omega$であり、$g : \Gamma \to \mathbb{R}$である。
説明
境界上に固定された点$x^{0} \in \partial \Omega$がある。そして変換$\Phi\ :\ \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}^{n}$を次のように定義する。
$$ \left\{ \begin{align*} \Phi (\Omega) &:= V \\ \Phi (x) &:= \left( \Phi^{1}(x),\ \cdots, \Phi^{n}(x) \right) = (y_{1},\ \cdots,\ y_{n})=y, \quad y \in V \\ y_{i}=\Phi^{i}(x) &:= x_{i}, \quad x \in \mathbb{R}^{n}\ (i=1,\cdots, n-1) \\ y_{n}=\Phi^{n}(x) &:= x_{n}-\gamma (x_{1},\cdots,x_{n-1}), \quad x \in \mathbb{R}^{n} \end{align*} \right. $$
すなわち、$\Phi$は境界の特定の部分の$n$番目の座標を$0$にする変換である。これは定義により全単射であることは明白である。従って、逆変換が存在し、これを$\Psi$とする。
$$ \left\{ \begin{align*} {l}\Psi (y) &:= \Phi^{{}-1}(y) \\ \Psi^{i}(y) &= x_{i}=y_{i}, \quad y \in \mathbb{R}^{n}\ (i=1,\cdots, n-1) \\ \Psi^{n}(y) &= x_{n}=y_{n}+\gamma (x_{1},\cdots,x_{n-1}), \quad x \in \mathbb{R}^{n} \end{align*} \right. $$
図で表すと、以下のようになる。
さて、$\Gamma \subset \partial \Omega$が開集合であり、$g\in C(\Gamma)$とする。そして固定された点$x^{0} \in \Gamma$が与えられたとする。そして$u \in C^{1} (\Omega)\cap C(\bar \Omega)$が境界条件$(1)$を解く解であると仮定する。そして$v$を以下のように定義する。
$$ v(y) := u(\Psi (y)) \quad \forall\ y\in V $$
つまり、$V$で$u$と同じ関数値を持つように$v$を定義したわけである。すると、次が成立する。
$$ u(x)=v(\Phi (x)) \quad \forall\ x\in \Omega $$
では、$Du, u, x$が$V$でどのようになるか見てみよう。まず$u_{x_{i}}$から計算してみると、次のようになる。
$$ u_{x_{i}}(x)=\sum \limits _{k=1}^{n} v_{y_{k}} \left( \Phi (x) \right) \Phi^{k}_{x_{i}}(x) $$
従って、
$$ \begin{align*} Du(x) &= \left( \sum \limits _{k=1}^{n} v_{y_{k}} \left( \Phi (x) \right) \Phi^{k}_{x_{1}}(x),\ \cdots,\ \sum \limits _{k=1}^{n} v_{y_{k}} \left( \Phi (x) \right) \Phi^{k}_{x_{n}}(x) \right) \\ &= (v_{y_{1}}\Phi^{1}_{x_{1}}+\cdots+v_{y_{n}}\Phi^{n}_{x_{1}},\ \cdots ,\ v_{y_{1}}\Phi^{1}_{x_{n}}+\cdots+v_{y_{n}}\Phi^{n}_{x_{n}} ) \\ &= \begin{pmatrix} v_{y_{1}} & v_{y_{2}} & \cdots & v_{y_{n}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \Phi^{1}_{x_{1}} & \Phi^{1}_{x_{2}} & \cdots &\Phi^{1}_{x_{n}} \\ \Phi^{2}_{x_{1}} & \Phi^{2}_{x_{2}} & \cdots & \Phi^{2}_{x_{n}} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ \Phi^{n}_{x_{1}} & \Phi^{n}_{x_{2}} & \cdots & \Phi^{n}_{x_{n}} \end{pmatrix} \\ &= Dv\left( \Phi (x) \right) D\Phi (x) \end{align*} $$
あるいは、
$$ Du(\Psi (y)) = Dv(y) D\Phi (\Psi (y)) $$
すると、$(1)$の式は次のようになる。
$$ F\Big( Du(\Psi (y) ), u( \Psi (y) ), \Psi (y) \Big) = F\Big( Dv(y)D\Phi (\Psi (y)), v(y), \Psi (y) \Big)=0 $$
さて、次のように非線形1次偏微分方程式を定義しよう。
$$ G(q, w, y):=F \Big (q D\Phi (\Psi (y) ), w, \Psi (y) \Big), \quad \forall (q, w, y)\in\mathbb{R}^{n}\times\mathbb{R}\times\bar V $$
すると$G\in C^{1}(\mathbb{R}^{n} \times \mathbb{R} \times \bar V)$であり、上記の結果から次の式が成立する。
$$ G \Big( Dv(y),\ v(y),\ y \Big)=0, \quad \forall y\in V $$
そして、$\Delta:=\Phi (\Gamma)$であり、$h(y):=g(\Phi (y)) \quad y \in \Delta$と定義する。すると$\Delta$は開集合であり、$\Delta \subset \partial V$である。そして、$\Delta$は$y^{0}$の近くで平らである。要するに、ここで定義した$v \in C^{1}(V) \cap C(\bar V)$は下記の境界条件を満たす解になる。
$$ \left\{ \begin{align*} G(Dv,\ v,\ y) &= 0 && \text{in } V \\ v &= h && \text{on } \Delta \subset \partial V \end{align*} \right. $$
これは、$(1)$と境界の任意に選ばれた部分が平らであること以外は、すべて同じである。そして、常にこのように境界を平らにすることができるので、最初から与えられた問題がこれであると仮定して解くことができる。