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調和関数の最大値原理 📂偏微分方程式

調和関数の最大値原理

定理1

$\Omega \subset \mathbb{R}^n$が開集合であり、有界であるとしよう。また、$u : \Omega \to \mathbb{R}$が$u \in C^2(\Omega) \cap C(\bar \Omega)$であり、ラプラス方程式を満たすとする。すると、以下が成立する。

  • (i) 最大値の原理maximum principle

    $$ \max \limits_{\bar \Omega} u = \max \limits_{\partial \Omega} u \quad \left( \mathrm{or} \ \ \min \limits_{\bar \Omega} u= \min \limits_{\partial \Omega} u \right) $$

  • (ii) 強い最大値の原理strong maximum principle

    $\Omega$が連結空間であり、 $$ u(x_{0})=\max \limits_{\bar \Omega} u \left( \mathrm{or}\ \ u(x_{0})=\min \limits_{\bar \Omega} \right) $$ を満たす$x_{0} \in \Omega$が存在するとき、$u$は$\Omega$で以下のような定数関数である。 $$ u(x) = M = \max_{\bar{\Omega}} u,\quad x\in \Omega $$

(i)では、境界での最大値(最小値)と境界を含む全ての場所での最大値(最小値)が同じであることを述べている。

(ii)で、$u$の関数値が定数である部分は$\Omega$に適用され、境界$\partial \Omega$では成立しないことに注意せよ。

証明

(ii)

$M=u(x_{0})=\max \limits_{\bar \Omega} u$とする。そして、$V \subset \Omega$を以下のように定義する。

$$ V := \left\{ x\in\Omega | u(x)=M \right\} $$

すると、$x_{0} \in V$であるため、$V \ne \varnothing$である。また、$\left\{ M \right\}^c=(-\infty, M)\cup (M,\infty)$が開集合であるので、$\left\{ M \right\}$は閉集合であり、したがって、$u^{-1}(\left\{M\right\})=V$は$\Omega$で閉集合である。今、任意の$y \in V$に対して、$d_{y}$を以下のように設定しよう。

$$ d_{y} :=\mathrm{dist} (y,\partial \Omega)=\inf \limits_{ x \in \Omega} |y-x|>0 $$

すると、調和関数の平均値定理により、$0<r<d_{y}$に対して次が成立する。

$$ u(y)=-\!\!\!\!\!\! \int _{B(y,r)} u(x)dx \le M $$

最大値が$M$であるため、平均は$M$以下でなければならない。実際、$y \in V$であるため、次のように等式が成立する。

$$ u(y)=-\!\!\!\!\!\! \int _{B(y,r)} u(x)dx = M $$

最大値が$M$の場所での平均が$M$であるためには、全ての$0<r<d_{y}$において$B(y,r)$は$u=M$である。たった一か所でも関数値が$M$より小さいならば、必ずその平均は$M$より小さいからである。したがって、$V$は$\Omega$で開集合であり、定義により次が成立する。

$$ B(y,r) \subset V \quad \forall r\in(0,d_{y}) $$

したがって、$V$は$\Omega$で開集合でありながら同時に閉集合である。$\Omega$が連結された空間となるための必要十分条件は、$\Omega$の部分集合で開集合でありながら同時に閉集合である集合は$\emptyset$または$\Omega$しかなく、$V \ne \emptyset$であるため、$V=\Omega$である。したがって、次が成立する。

$$ M=u(x) \quad \forall x \in \Omega $$

最小値についても、類似の方法で証明できる。

(i)

$u$がコンパクト集合$\bar \Omega$で連続であるため、最大値(最小値)$x_{0} \in \bar{\Omega}$が存在する

$$ u(x_{0})=\max \limits_{\bar \Omega} u \quad \left( \mathrm{or} \ \ u(x_{0})=\min \limits_{\bar \Omega} u\right) $$

今、$x_{0}$が境界にある場合と内部にある場合を考えよう。

  • case 1. $x_{0} \in \partial \Omega$

    自明に次が成立する。

    $$ \max \limits_{\partial \Omega} = \max \limits_{\bar \Omega} $$

  • Case 2. $x_{0} \in \Omega$

    $\Omega_{0} \subset \Omega$が$x_{0}$を含む連結成分connected componentであるとしよう。つまり$\Omega_{0}$は$\Omega$を構成する$\mathrm{countable\ union\ oped\ set}$である。すると$\Omega_{0}$は開集合であり、連結である。そして$\partial \Omega_{0} \subset \partial \Omega$である。(ii)を$\Omega_{0}$に適用すれば、次を得る。

    $$ u=u(x_{0})=\max \limits_{\bar \Omega_{0}} u $$

    すると、Part 1. により、次が成立する。

    $$ u(x_{0})=\max \limits_{\partial \Omega_{0}} u \le \max \limits_{\partial \Omega} u \le \max \limits_{\bar \Omega}u=u(x_{0}) $$

    したがって、次を得る。

    $$ \max \limits_{\partial \Omega} u = \max \limits_{\bar \Omega}u $$

最小値についても、類似の方法で証明できる。


  1. Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (第2版, 2010), p27 ↩︎