二つのレビ-チビタ記号の積
📂数理物理学二つのレビ-チビタ記号の積
定理
次のように定義される ϵijk を レビ-チビタ記号 と呼ぶ。
ϵijk=⎩⎨⎧+1−10if ϵ123,ϵ231,ϵ312if ϵ132,ϵ213,ϵ321if i=j or j=k or k=i
次のように定義される δij を クロネッカーのデルタ と呼ぶ。
δij:={1,0,i=ji=j
二つのレビ-チビタ記号の積とクロネッカーのデルタとの間には、次の関係が成り立つ。
(a) 一つのインデックスが同じ場合: ϵijkϵilm=δjlδkm−δjmδkl
(b) 二つのインデックスが同じ場合: ϵijkϵijm=2δkm
(c) 三つのインデックスが同じ場合: ϵijkϵijk=6
説明
文章全体で ∑ を省略する アインシュタインの記法 を使用していることに注意してください。これは上記の式においても同じです。 (a)は使用頻度が高いため、覚えておくと便利です。簡単に覚える方法は次のとおりです。

証明
(a)
ei (i=1,2,3) を3次元における 標準単位ベクトル としよう。
e1=(1,0,0),e2=(0,1,0),e3=(0,0,1)
Pijk を1行目が ei、2行目が ej、3行目が ek の 3×3 行列 とする。
Pijk=— ei —— ej —— ek —
すると、行列式の性質により detPijk=ϵijk と簡単にわかる。まず P123 は 単位行列 であるため、行列式は 1 である。また、異なる行の順序を偶数回変えると行列式の値は変わらないため、
detP123=detP231=detP312=1
異なる行の順序を奇数回変えると行列式の符号が逆になるため、
detP132=detP213=detP321=−1
同じ行を二つ以上含む行列の行列式は 0 であるため、残りの場合は全て 0 となる。したがって detPijk=ϵijk が成立する。一つのインデックスが同じ二つのレビ-チビタ記号の積は、 行列式の性質 をうまく使うと、次のようになる。
ϵijkϵilm=det— ei —— ej —— ek —det— ei —— el —— em —=det— ei —— ej —— ek —det∣ei∣∣el∣∣em∣=det— ei —— ej —— ek —∣ei∣∣el∣∣em∣=detei⋅eiej⋅eiek⋅eiei⋅elej⋅elek⋅elei⋅emej⋅emek⋅em(∵detA=detAT)(∵(detA)(detB)=det(AB))
ei は標準単位ベクトルであるため、ei⋅ej=δij が成立する。
ϵijkϵilm=detδiiδjiδkiδilδjlδklδimδjmδkm
このとき、i が j,k,l,m と全て異なる場合のみを考えていることに注意しよう。なぜなら j,k,l,m のいずれかが i と同じであれば、ϵijkϵilm=0 となり、意味のない結果だからである。したがって結果
は次のようになる。
ϵijkϵilm=det10‘‘00δjlδkl0δjmδkm=δjlδkm−δjmδkl
■
(b)
(a) で l=j の場合である。したがって、次のようになる。
ϵijkϵijm=δjjδkm−δjmδkj
このとき δjj=3 が成立し、また δjmδkj=δmk も成立するため、結果は次のようになる。
ϵijkϵijm=δjjδkm−δjmδkj=3δkm−δmk=2δkm
■
(c)
(b) で m=k の場合であるため、
ϵijkϵijk=k=1∑32δkk=2δ11+2δ22+2δ33=2+2+2=6
または、0でない全ての項を展開すると、次を得る。
ϵijkϵijk=i=1∑3j=1∑3k=1∑1ϵijkϵijk=ϵ123ϵ123+ϵ231ϵ231+ϵ312ϵ312+ϵ132ϵ132+ϵ213ϵ213+ϵ321ϵ321=6
■