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体の自己同型写像 📂抽象代数

体の自己同型写像

定義 1

$E$ を $F$ の拡大体とする。

  1. 体 $E$ に対する同型写像 $\sigma : E \to E$ を自己同型automorphismと呼び、$E$ の自己同型の集合を $\text{Auto} (E)$ と表す。
  2. $\sigma \in \text{Auto} (E)$ に対して $\sigma ( a ) = a$ ならば、$\sigma$ が固定した$a$ を残すと言う。
  3. $S \subset \text{Auto} (E)$ とする。全ての $a \in F$ に対して全ての $\sigma \in S$ が固定した $a$ を残すならば、$S$ が固定した部分 $F$ を残すと言う。
  4. $\left\{ \sigma \right\} \subset \text{Auto} (E)$ が固定した $F$ を残すならば、$\sigma$ が固定した $F$ を残すと言う。
  5. $\left\{ \sigma \right\} \subset \text{Auto} (E)$ が固定した体 $E_{ \left\{ \sigma \right\} }$ を残すならば、$\sigma$ が固定した体 $E_{\sigma}$ を残すと言う。
  6. $F$ を残す $E$ の全ての自己同型の集合を $G ( E / F )$ と表し、$F$ 上での $E$の群と呼ぶ。

定理

  • [1]: $\left< \text{Auto} ( E ) , \circ \right>$ は群である。
  • [2]: $G ( E / F) \le \text{Auto} ( E )$

言葉が非常に難しく複雑であるため、例を通じて概念的に理解する方が良い。

$$ F = \mathbb{Q} ( \sqrt{2} ) \le \mathbb{Q} ( \sqrt{2} , \sqrt{3} ) = E $$ とすると、$(x^2 - 3) \in F [ x ]$ は $F$ 上の既約元なので、$\sqrt{3} , \sqrt{-3}$ は $E$ 上の素元である。共役同型写像定理により、$\psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } : E \to E$ は同型写像であり、したがって $ \psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } \in \text{Auto} (E) $ であることが分かる。

実際に関数 $\psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} }$ を取ってみる。$a,b,c,d \in \mathbb{Q}$ に対して $$ \psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } ( a+ b \sqrt{2} + c \sqrt{3} + d \sqrt{6} ) = a+ b \sqrt{2} - c \sqrt{3} - c \sqrt{2} \sqrt{3} $$ 全ての $( x + y \sqrt{2} ) \in \mathbb{Q} ( \sqrt{2} )$ に対しては、

$$ \psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } ( x + y \sqrt{2} ) = x + y \sqrt{2} $$ なので、$\psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} }$ は固定した $\mathbb{Q} ( \sqrt{2} )$ を残すと言える。簡単に言うと、$\mathbb{Q} ( \sqrt{2} )$ は $\psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} }$ の影響を受けない部分体と見なせる。「固定する」や「残す」といった表現を使うのはこの意味である。

また、恒等写像 $I$ と関数の合成操作 $\circ$ について、 $$ \left( \psi_{ \alpha , - \alpha } \circ \psi_{ \alpha , - \alpha } \right) = I $$ したがって、 $$ \left< \left\{ I, \psi_{ \sqrt{2} , - \sqrt{2} }, \psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } , ( \psi_{ \sqrt{2} , - \sqrt{2} } \circ \psi_{ \sqrt{3} , - \sqrt{3} } ) \right\} , \circ \right> $$ は群を成すだけでなく、特にクラインの四元群と同型となる。

証明

[1]

  • (i): 関数の合成 $\circ$ は結合法則を満たし、$\text{Auto} ( E )$ の関数同士の合成は $E$ の自己同型となる。
  • (ii): 恒等写像 $I : E \to E$ は、全ての $a \in E$ に対して $I (a) = a$ なので自己同型であり、$I \in \text{Auto} ( E )$ である。
  • (iii): $\text{Auto} ( E )$ は自己同型の集合なので、任意の $\sigma$ に対してその逆写像 $\sigma^{-1} \in \text{Auto} ( E )$ が存在する。

[2]

  • (i): 関数の合成 $\circ$ は結合法則を満たし、$\sigma , \tau \in G ( E / F )$ と $a \in F$ に対して $$ (\sigma \tau) = \sigma ( \tau ( a ) ) = \sigma (a) = a $$ ので、$(\sigma \tau) \in G ( E / F )$ である。
  • (ii): 恒等写像 $I$ は $ G ( E / F )$ の単位元となる。
  • (iii): $\sigma ( a ) = a$ ならば $a = \sigma^{-1} (a)$ なので、$\sigma^{-1} \in G ( E / F )$ である。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p418. ↩︎