共軛同型写像定理の証明
📂抽象代数共軛同型写像定理の証明
定義
体 F 上でαが代数的だとしよう。
- 最大項の係数が1でp(α)=0を満たすp(x)∈F[x]を**F上でのαに対する既約多項式**と言って、irr(α,F)=p(x)と表される。
- irr(α,F)の最大項の次数を**F上でのαの次数**と言って、deg(α,F)と表される。
- Fの代数的拡大体 Eにおいて、irr(α,F)=irr(β,F)とするとき、二つの元α,β∈EはF上で共役conjugateと言われる。
例
自然な例として、共役複素数 a+ib=a−ibを考えてみよう。既約多項式
p(x):=(x2−2ax+a2+b2)∈R[x]
を定義すると
====p(a+ib)a2+i2ab−b2−2a2−i2ab+a2+b20a2−i2ab−b2−2a2+i2ab+a2+b2p(a−ib)
だから、代数学の表現を使っても(a+ib),(a−ib)∈CはR上で共役であることがわかる。
共役についてもっと直感的に理解する例として、誤差方程式
x5+x3+x2+1=0
を考えてみよう。
既約因子R[x]に因数分解すると
x5+x3+x2+1=(x3+1)(x2+1)=(x+1)(x2+x+1)(x2+1)
だから、解x=−1、x=±1、x=2−1±−3を見つけることができる。これらはすべて与えられた方程式を満たすが、x=−1は一次方程式の解になるので、他の解と共役になることはできない。また、x=iとx=2−1+−3は異なる既約多項式の零だから共役ではない。
複素数を使わずに共役になる例として、(x2−2)∈Q[x]の零である2と(−2)はQ上で共役である。
定理
体F上で代数的なαに対してdeg(α,F)=nとしよう。写像ψα,β:F(α)→F(β)を
ψα,β(c0+c1α+⋯+cn−1αn−1):=c0+c1β+⋯+cn−1βn−1
と定義すると
- ψα,βは同型写像⟺irr(α,F)=irr(β,F)
証明
(⟹)とする。
irr(α,F):=a0+a1x+⋯+anxn
で、
a0+a1α+⋯+anαn=0
だ。ψα,βは同型写像なので、
ψα,β(0)===ψα,β(c0+c1α+⋯+cnαn)c0+c1β+⋯+cnβn0
だ。これはすなわちirr(β,F)がirr(α,F)を割ることを意味し、(ψα,β)−1=ψβ,αについても同様なので、次のように成り立つ。
irr(β,F)=irr(α,F)
(⟸)
p(x):=irr(β,F)=irr(α,F)
として代入関数ϕα:F[x]→F(α)とϕβ:F[x]→F(β)を定義しよう。すると、p(α)=p(β)=0のため、ϕαとϕβは同じ核⟨p(x)⟩⊂F[x]を持つ。
準同型写像の基本定理: 環R、r′に対して準同型写像ϕ:R→r′が存在する場合、R/ker(ϕ)≃ϕ(R)
準同型写像の基本定理により、二つの同型写像ψα:F/⟨p(x)⟩→F(α)とψβ:F/⟨p(x)⟩→F(β)が存在する。これに
ψα,β:=ψα∘(ψα)−1
とすると、ψα,β:F(α)→F(β)も同型写像である。従って、(c0+c1α+⋯+cn−1αn−1)∈F(α)に対して次のように成り立つ。
===ψα,β(c0+c1α+⋯+cn−1αn−1)(ψα∘(ψα)−1)(c0+c1α+⋯+cn−1αn−1)ψβ((c0+c1x+⋯+cn−1xn−1)+⟨p(x)⟩)c0+c1β+⋯+cn−1βn−1
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一方、実数係数の方程式については、以下の有用な系を得ることができる。
系
f(x)∈R[x]に対してf(a+ib)=0の場合、f(a−ib)=0
系の証明
f(x):=c0+c1x+⋯+cnxnとしよう。
f(a+ib)=0なので、
f(a+ib):=c0+c1(a+ib)+⋯+cn(a+ib)n=0
iと−iはR上で共役なので、次のように成り立つ。
0=ψi,−i(0)=ψi,−i(f(a+ib))=f(a−ib)
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