ユークリッド幾何学
📂抽象代数ユークリッド幾何学
定義
整域 D において次の二つの条件を満たすユークリッドノルムeuclidean Norm ν:D∖{0}→N0 が存在すれば、D をユークリッド整域という。
- (i): 全ての a,b∈D(b=0) に対して
a=bq+r
を満たす q と r が存在する。このとき r=0 か ν(r)<ν(b) のいずれかでなければならない。
- (ii): 全ての a,b∈D(b=0) に対して ν(a)≤ν(ab)
- N0 は自然数の集合に 0 を含む集合を意味する。
定理
ユークリッド整域 D の単位元を 0、単元を 1、ユークリッドノルムを ν とする。
- [1]: すべての ED は PID である。
- [2]: すべての ED は UFD である。
- [3]: 0 ではないすべての d∈D に対して ν(1)≤ν(d)
- [4]: u∈D が単元 ⟺ ν(u)=ν(1)
説明
「ユークリッド整域」という言葉はあまり長くはないが、通常は ED という略語が多く使用される。
条件 (i)、(ii) は整数環 Z において自然に満たされる条件であり、ユークリッドノルム ν(n):=∣n∣ が存在するので Z はユークリッド整域になる。そもそもユークリッドノルムという言葉自体が整数論のユークリッド互除法から取られたものである。
一方、体 F に対して F[x] を考えると、ユークリッドノルム ν(f(x)):=deg(f(x)) を定義することでユークリッドノルムになる。そもそも除法定理がこの条件に該当する。
様々な整域を図示すると上記のようになり、EDがいかに多くの良い性質を持っているかが一目でわかる。
証明
[1]
D のイデアルを N と置く。
N={0}=⟨0⟩ は当然主イデアルなので、N={0} について考える。
すると、0 ではない全ての n∈N に対して
ν(b)≤ν(n)
を満たす b=0 を一つ取ることができる。a∈N とすると条件 (i) により
a=bq+r
を満たす q,r∈D が存在する必要がある。N=Nq はイデアルであるため、r=a−bq もまた N に存在する要素であることがわかる。b は ν(b) が最も小さくなるような要素であったため、条件 (i) により r=0 でなければならない。全ての要素 a∈N が a=bq として示されることはすなわち N=⟨b⟩ ということであり、全てのイデアル N は主イデアルである。
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[2]
ED は PID であり、PID は UFDであるため ED は UFD である。
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[3]
条件 (ii) により
ν(1)≤ν(1d)=ν(d)
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[4]
(⟹)
u が単元であるため、その逆元 u−1 が存在して
ν(u)≤ν(uu−1)=ν(1)
であり、定理[3]により ν(1)≤ν(1) なので
ν(u)=ν(1)
(⟸)
1=uq+r とする。ν(1)=ν(u) ならば ν(1)<ν(u) ではないので定義の条件 (i) により r=0 でなければならない。したがって 1=uq であり、u は単元となる。
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関連項目