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代数的拡大体 📂抽象代数

代数的拡大体

定義 1

$E$を$F$の拡大体とし、これを$n \in \mathbb{N}$とする。

  1. $E$の全ての元が$F$上で代数的数であれば、$E$を$F$の代数的拡大体という。
  2. $E$が$F$上の$n$次元ベクトル空間であれば、$E$を$F$上の$n$次有限拡大体という。
  3. $F$上の有限拡大体$E$の次数は$[ E : F ]$と表す。

定理

$E$が$F$の有限拡大体であり、$K$が$E$の有限拡大体だとする。

  • [2]: $$[E : F] = 1 \iff E = F$$
  • [3]: $$[K : F] = [K : E ] [E : F]$$

説明

次数について感覚を掴むため、最も馴染み深い実数体と有理数体を見てみよう。

$\mathbb{R}$は明らかに$[ \mathbb{R} : \mathbb{R} ] = 1$であるから、誰が何と言おうと$1$次実数体と呼んでも構わない。一方で、複素数は2つの独立した実数で表せるから、ユークリッド空間$ \mathbb{R} \times \mathbb{R} = \mathbb{C}$または虚数単位$i$を加えた単純拡大体$\mathbb{R} ( i ) = \mathbb{C}$とも見ることができる。この場合$[ \mathbb{C} : \mathbb{R} ] = 2$であるから、複素数体を$2$次実数体と呼んでもよい。

$\mathbb{Q}$に無理数$\sqrt{2}$を加えた有限拡大体$\mathbb{Q} ( \sqrt{2} )$は$\mathbb{Q}$上で$\left\{ 1 , \sqrt{2} \right\}$を基底として持つため、次数は $$ \left[ \mathbb{Q} ( \sqrt{2} ) : \mathbb{Q} \right] = 2 $$ となる。ここでさらに$\sqrt{3}$を加えると$\sqrt{2} \cdot \sqrt{3} = \sqrt{6}$になるから、$\left( \mathbb{Q} ( \sqrt{2} ) \right) ( \sqrt{3} ) = \mathbb{Q} ( \sqrt{2} , \sqrt{3} )$の基底は$\left\{ 1 , \sqrt{2} , \sqrt{3} ,\sqrt{6} \right\}$となる。従って$\mathbb{Q}$上での次数を計算すると $$ \left[ \mathbb{Q} ( \sqrt{2} , \sqrt{3} ) : \mathbb{Q} \right] = 4 $$ を得る。

ここで$\sqrt{3}$の代わりに$2^{1/3}$を加えてみると、$\mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right)$の基底は全ての組み合わせを考慮して$\left\{ 1 , 2^{1/2} , 2^{1/3} , 2^{2/3} , 2^{5/6} , 2^{7/6} \right\}$のように複雑に示される。次数を計算すると $$ \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right) : \mathbb{Q} \right] = 6 $$ だが、定理[3]に従って以下のように計算できる。 $$ \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right) : \mathbb{Q} \right] = \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right) : \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) \right] \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) : \mathbb{Q} \right] $$ 右辺で$\left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) : \mathbb{Q} \right]$の基底は当然$\left\{ 1 , 2^{1/6} , 2^{2/6} , 2^{3/6} , 2^{4/6} , 2^{5/6} \right\}$であるから、 $$ \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) : \mathbb{Q} \right] = 6 $$ となる。要約すると、 $$ \left[ \mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right) : \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) \right] = 1 $$ であるから、定理[2]によって、 $$ \mathbb{Q} \left( 2^{1/2} , 2^{1/3} \right) = \mathbb{Q} \left( 2^{1/6} \right) $$ という結論を得ることができる。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p283. ↩︎