極大イデアル
📂抽象代数極大イデアル
定義
環 R の イデアル 中 R 以外のどんなイデアル N=R にも含まれないイデアル M=R を R の 極大イデアルmaximal Idealという。また、 M⊊R が極大イデアルであることは次のようになる。
∄N:M⊊N⊊R
説明
代数学で言う「マキシマル」は 集合論でのマキシマル とほぼ同じである。
当然、定義だけでは一意性を保証することはできない。例えば、整数環 Z に対して 2Z, 3Z はどちらも Z 以外の超イデアルsuperidealが存在しないため、 Z の極大 イデアル となる。同様に任意の 素数 p に対して pZ はすべて Z の極大 イデアル となる。
一方、極大イデアルは体fieldと関連して次の性質を持つ。これは 素イデアルと整域の関係 と類似している。
定理
可換環 R が 単位元 1R を持つとする。
- M は R の極大イデアル ⟺ R/M は 体
証明
(⟹)
R/M は単位元 (1R+M) を持つ可換環である。 R の単位元ではない a∈/M に対して (a+M)∈R/M とすると、すべての r∈R に対して ar∈R であり、 M が R の極大イデアルであるので
R=M+aR
である。つまり
1R=m+ar
を満たす m∈M, r∈R が存在することになり、これは前述したように、 R/M が (1R+M) を持つので
1R+M=ar+M
のように表すことができる。まとめると
1R+M=(a+M)(r+M)
であるため、 M で単位元ではないすべての (a+M) に対して逆元 (a+M)−1=(r+M) が存在する。したがって R/M は体となる。
(⟸)
M が極大でないようにする、すなわち M⊊N⊊R を満たすイデアル N◃R が存在すると仮定する。
そうすると M には属さないが、 N には属するある元 n∈N も存在するだろう。 R/M を体としたので
(n+M)(s+M)=ns+M=1R+M
を満たす s∈R が存在するはずである。さて、 n′:=(1−ns)∈M⊊N というと
1R=(n′+ns)∈N
である。しかし イデアル N は単位元 1R を持つので N=R 、これは仮定に矛盾する。
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