双対空間
📂線形代数双対空間
双対空間
定義1
ベクトル空間 X の全ての連続する線形汎関数の集合を X∗ と標記し、これを X の双対空間dual space、簡単に X のデュアルと呼び、以下のように表記する。
X∗:={x∗:X→C ∣ x∗ is continuous and linear}
X∗:=B(X,C)
B(X,C) は、定義域が X で値域が C の有界線形作用素の集合である。
定義2
体 F 上のベクトル空間 X に対して、X 上の線形汎関数の集合を X の双対空間dual spaceと呼び、X∗ と表記する。
X∗=L(X,F)
L(X,F) は、X から F への全ての線形変換の集合である。
説明
- 線形作用素の性質により、連続という条件は有界という条件と同値である。
- 双対空間の記号として ∗ ではなく ′ も使われることがある。
双対空間の双対空間についても話すことができる。この場合は、X∗∗=(X∗)∗ のように表記し、バイデュアルbidual、ダブルデュアルdouble dual、セカンドデュアルsecond dualなどと呼ばれる。
オペレーターのノルム ∥f∥=x∈X∥x∥=1sup∣f(x)∣ について、(X∗,∥⋅∥) は バナッハ空間となる。これに対して、次の定理が成立する。
定理
X が有限次元 ベクトル空間である場合、次が成立する。
dimX∗=dimX
証明
方法1
戦略: dimX の基底を使って、dimX∗ が有限次元になるような基底を作る。
dimX=n とすると、X は有限次元なので基底 {e1~,⋯,en~} を持つ.ej:=∥ej~∥ej~∈X とすると、∥ej∥=1 であり、{e1,⋯,en} は依然として X の基底である。今、ej∗:(X,∥⋅∥)→(C,∣⋅∣) を以下のように定義しよう。
ej∗(ei):=δij
線形作用素の性質
T:(X,∥⋅∥X)→(Y,∥⋅∥Y) が線形作用素だとしよう。X が有限次元空間であれば、T は連続である。
dimX=n と仮定したので、ej∗ は連続する線形汎関数である。
線形汎関数が線形独立組合せで表されるための必要十分条件
f1,⋯,fn が定義域が X の線形汎関数だとしよう。
f1,⋯,fn が線形独立 ⟺ fj(xi)=δij を満たす x1,⋯,xn が存在する
上記の定理により、β∗={e1∗,…,en∗}は線形独立である。f∈X∗ を任意の x=i=1∑ntiei∈X に作用させると
f(x)=f(i=1∑ntiei)=i=1∑ntif(ei)=i=1∑nf(ei)ti
ti=ei∗(k=1∑ntkek)=ei∗(x) であるから、
f(x)=i=1∑nf(ei)ei∗(x)=[i=1∑nf(ei)ei∗](x)
従って、
f=i=1∑nf(ei)ei∗∈span{e1∗,⋯,en∗}
つまり、β∗={e1∗,⋯,en∗} は線形独立であり、X∗ を生成するので、X∗ の基底である。
dimX∗=n
■
方法2
dim(L(X,F))=dim(X)dim(F)であるから、
dim(X∗)=dim(L(X,F))=dim(X)dim(F)=dim(X)
■
定理の証明はこれで終わりだが、X∗ の基底を具体的に見つけよう。X の順序基底を β={x1,…,xn} としよう。そして、fi を i 番目の座標関数としよう。
fi(xj)=δij
すると、fi は X 上で定義された線形汎関数である。今、β∗={fi,…,fn} としよう。
Claim: β∗ は X∗ の(順序)基底である
dim(X∗)=n であることは既にわかっているので、span(β∗)=X∗ を示せばいい。つまり、任意の f∈X∗ が fi の線形組合せで表されることを示さなければならない。与えられた f に対して、g=∑i=1nf(xi)fi とする。すると、実際にこの g がまさに f であり、f が fi の線形組合せで表されることがわかる。1≤j≤n について、
g(xj)=(i=1∑nf(xi)fi)(xj)=i=1∑nf(xi)fi(xj)=i=1∑nf(xi)δij=f(xj)
よって、g=f であり、f=∑i=1nf(xi)fi である。したがって、β∗ は X∗ を生成する。
双対基底
上記の記法に従い、X∗ の順序基底 β∗={f1,…,fn} を β の双対基底dual basis、相互基底reciprocal basisと呼ぶ。
fi:X→F by fi(xj)=δij
この場合、δij はクロネッカーデルタである。