ローレンツ変換による特殊相対性理論の特徴:時間の遅れ
ローレンツ変換の特性
特殊相対性理論では、二つの座標系間の変換は古典的な変換と異なる。「光の速度はすべての観測者に対して同じだ」という点のためである。この条件を考慮して導出されたものがローレンツ変換だ。ローレンツ変換によって、古典物理学では現れない新しい現象が3つある。
時間遅延
簡単に言うと、光速に近い速度で動く物体ほど、時間がゆっくり(遅く)流れることを指す。時間軸が長くなるという意味で、時間拡張とも呼ばれる。
系と、それに対して方向にの速度で等速運動する系があるとしよう。系で静止している物体のワールドラインは以下の通りである。
イベントが始まって終わるまでに、移動する系系から見ると、より長い時間がかかる。つまり、時間がゆっくり流れることがわかる。静止した系と比較した時、時間が倍だけ伸びることがあり、は系の速度に依存する。速く動けば動くほどの値が大きくなり、時間がますます遅くなる。
これは、火星やインターステラーのような映画で地球と宇宙船の中で人々が異なる年齢になる現象そのものである。長さの収縮と同様に、系が動いていない方向(垂直な方向)では、時間の遅延は起こらない。興味があれば、座標を変えて直接計算してみるとよい。常に移動方向と平行な方向だけに同時性が崩れ、時間遅延や長さの収縮が起こる。
思考実験
時間遅延現象を確認できる最も代表的な実験である。光の速度は一定なので、定数と表記しよう。
上の図のようなロケットがあるとする。ロケットは右に動いており、床から天井まで垂直方向に光を撃つ。床から出発した光は天井で反射して再び床に戻る。ロケットの床と天井の距離をとする。ロケット内で光が往復するのにかかる時間はである。この結果は、観測者がロケット内にいる場合である。では、ロケットの外からこの状況を観測した場合、どうなるだろうか?
ロケットの外からは、光が床と天井を往復する際、赤い線の経路をたどるように見えるだろう。ロケットの速度をとしよう。ここでピタゴラスの定理を使えば、ロケットの外での時間を計算できる。
ここでをローレンツ因子と呼ぶ。今、とを比較すると次のようになる。
ロケットの内外での時間が倍の差を見せる。ロケットの速度は光の速度より小さいのででありであるため、である。つまり、同じ状況にも関わらず、ロケットの内外で時間の流れが異なる。ロケット内では外よりも時間がゆっくり流れる。