多項式の既約元
📂抽象代数多項式の既約元
定義
定数関数ではないf(x)∈F[x]がf(x)より次数が低い何らかのg(x),h(x)∈F[x]の積f(x)=g(x)h(x)として表すことができないとき、f(x)はF上での既約元と言われる。
説明
例えばQ[x]を考えてみると、x2−2はQ上で既約元であるが、R[x]でのx2−2はR上で
(x+2)(x−2)
と因数分解できる。また、x2+1はR上では既約元だがCでは
(x+i)(x−i)
と因数分解できる。
位相数学で開集合と閉集合を話すとき、全体集合をどこにするかが重要なのと同じように、どこで既約かを気にしなければならない。もちろん、定義ではF[x]の多項式はF上でだけ考えればいいが、Fを拡張したEについてはf(x)∈E[x]になるだろう。
このような既約性を考えることで、我々は因数定理の真の完成を考えることができるようになる。
定理
- [1]: 既約元p(x)∈F[x]がr1(x)⋯rn(x)∈F[x]を割るなら、p(x)はr1(x),⋯,rn(x)のいずれかを割らなければならない。
- [2]: F上で定数関数ではないすべてのf(x)∈F[x]は既約元の積に因数分解され、その方法は唯一である。
- ここで言う唯一性は、その順序や単位元の掛け合わせは考慮しないことである。たとえば
x2−1=(x+1)(x−1)=[−(x+1)][−(x−1)]=(x−1)(x+1)
といった違いは気にしないということである。
意義
この定理は数論で現れる算術の基本定理を抽象代数に拡張したものと見ることができる。因数定理が多項式の因数分解の存在性を証明したならば、上の事実はそれが唯一性を保証するものである。