一貫性を持つ多段階法の安定性とルート条件
📂数値解析一貫性を持つ多段階法の安定性とルート条件
定理
もしマルチステップメソッドが一貫性を持つならば、メソッドは安定性を持つ⟺メソッドはルート条件を満たす
説明
閉区間[x0,b]に対してh単位で切り分けてノードポイントを作るとき、x0≤x1≤⋯≤xN(h)−1≤xN(h)≤bとしよう。ここでN(h)はhに従って変わる最後のノードポイントのインデックスを表す。
元の与えられた初期値y0,⋯,ypに対して非常に少し変化を加えたz0,⋯,zpを考えてみよう。メソッドが安定性を持つということは、十分に小さな正の数hとϵに対して、0≤n≤pmax∣yn−zn∣≤ϵとするとき、0≤n≤N(h)max∣yn−zn∣≤cϵを満たすようなある定数Cがhと独立に存在するということである。初期の小さな変化がhを調整することにより大きな変化になることがあれば、メソッドは安定性を持たないと言われる。
証明
一貫性を持つマルチステップメソッド: 初期値問題{y′=f(x,y)(y(x0),⋯,y(xp))=(Y0,⋯,Yp)に対してマルチステップメソッド
yn+1=j=0∑pajyn−j+hj=−1∑pbjf(xn−j,yn−j)
は以下を満たす。
⎩⎨⎧j=0∑paj=1−j=0∑pjaj+j=−1∑pbj=1
ルート条件: 一貫性を持つマルチステップメソッドに対してρ(r)=rp+1−j=0∑pajrp−jとしよう。方程式ρ(r)=0の根r0,⋯,rpが次の条件を満たすとき、与えられたマルチステップメソッドはルート条件root conditionを満たすと言われる。
- (i): ∣rj∣≤1
- (ii): ∣rj∣=1⟹ρ‘(rj)=0
(⇒)
メソッドが安定性を持つにも関わらず、ルート条件を満たさないと仮定してみよう。
この仮定に対して初期値問題{y′=0y(0)=0が反例になることを示す。
与えられた問題の数値解は明らかに全てのn≥0に対してyn=0である。
ここでy0,⋯,ypに対して非常に少し変化を加えたz0,⋯,zpを考えてみると
zn+1=a0zn+a1zn−1+⋯+ap−1zn−p−1+apzn−p
特性ソリューションを求めるためにzn:=rnとしよう
rn+1=a0rn+a1rn−1+⋯+ap−1rn−p−1+aprn−p
両辺をrn−pで割ると
rp+1=a0rp+a1rn−1+⋯+ap−1r1+ap
このp+1次方程式はr0=1以外にもp個の根r1,r2,⋯,rpを持つ。したがって、ジェネラルソリューションはあるc0,⋯,cpに対して
zn=c0r0n+c1r1n+⋯+cprpn
このとき、ある0≤j≤pに対して以下の二つのケースを考えよう。
- ケース1.
条件(i)を満たさないため、jに対して∣rj∣>1である場合z0=0+⋯+cjrj0+⋯+0=ϵ、つまりci={ϵ0,i=j,i=jとする
z0=cjrj0=ϵ
というわけだ。言い換えれば、z0=cj(rj)0⟹zn=cj(rj)nなので
z0=ϵ,z1=ϵrj,⋯,zp=ϵrjp
となり
0≤n≤pmax∣yn−zn∣=ϵ∣rj∣p
メソッドを[x0,b]に適用してみると
x0≤xn≤bmax∣yn−zn∣=ϵ∣rj∣N(h)
しかし、h→0のときN(h)→∞であり∣rj∣>1なので
x0≤xn≤bmax∣yn−zn∣=c⋅ϵ∣rj∣p
を満たすC>0は存在しえない。したがってメソッドは安定性を持たなくなる。 - ケース2.
条件(ii)を満たさないため、jに対して∣rj∣=1⟹ρ’(rj)=0である場合、これは∣rj∣=1であればrjが特性方程式の重根であることを意味し、rjの重複度は少なくとも2でなければならない。この場合、ジェネラルソリューションは線形独立な特殊ソリューションrjn,nrjn,⋯,nν−1rjnを含む線形結合として表される。数式で書くと、
zn=cj0rjn+cj1nrjn+⋯+cjν−1nν−1rjn
ここでϵ:=0≤k≤ν−1max∣cjk∣とすると∣rj∣=1なので
∣z0∣≤ϵ,∣z1∣≤2ϵ,⋯,∣zp∣≤ϵ(1+p+⋯+pν−1)=ϵp−1pν−1
マルチステップメソッドなのでp≥2に対して
0≤n≤pmax∣yn−zn∣=ϵp−1pν−1
メソッドを[x0,b]に適用してみると
x0≤xn≤bmax∣yn−zn∣=ϵN(h)−1N(h)ν−1
しかし、h→0のときN(h)→∞であるため
x0≤xn≤bmax∣yn−zn∣=c⋅ϵp−1pν−1
を満たすC>0は存在しえない。したがってメソッドは安定性を持たなくなる。
(⇐) 元の証明があまりにも難しく、多くの飛躍がある。
en:=yn−znとすると、非同型線形微分方程式y=z+eを解くことと考えられる。
逆に、z=y−eは同型線形微分方程式になる。
yn+1=j=0∑pajyn−j+hj=−1∑pbjf(xn−j,yn−j)
zn+1=j=0∑pajzn−j+hj=−1∑pbjf(xn−j,zn−j)
(1)から(2)を引くと、
en+1=i=0∑najen−j+hj=−1∑pbj[f(xn−j,yn−j)−f(xn−j,zn−j)]
を得る。yn=d0s0n+d1s1n+⋯+dpspnとすると、
en=g0(r0+s0)n+g1(r1+s1)n+⋯+gp(rp+sp)n
これに対して0≤n≤pmax∣yn−zn∣=ϵとしよう。与えられたメソッドは
en=g0(r0+s0)n+g1(r1+s1)n+⋯+gp(rp+sp)n
の(r0+s0),⋯,(rp+sp)に対してもルート条件を満たすので、
∣en∣=≤≤∣g0∣∣r0+s0∣n+∣g1∣∣r1+s1∣n+⋯+∣gp∣∣rp+sp∣np1≤i≤pmax∣gi∣1≤i≤pmax∣ri+si∣np⋅ϵ⋅1
したがってx0≤xn≤bmax∣en∣=pϵであり、メソッドは安定性を持つ。
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