logo

剰余類の性質とその証明 📂抽象代数

剰余類の性質とその証明

定理

HHGG部分群だとしよう。すると、群GGの元aaに対して、集合aH={ahhH}aH= \left\{ ah | h\in H \right\}左剰余類といい、Ha={hahH}Ha = \left\{ ha | h\in H \right\}右剰余類という。

H<G,a,bG,hHH < G,\enspace a,b \in G,\enspace h \in Hとする。すると、以下の性質を満たす。

  1. aaHa \in aH

  2. aH=H    aHaH=H \iff a \in H

  3. aH=bH    abHaH=bH \iff a \in bH

  4. aH=bH  or  aHbH=aH=bH \ \ \mathrm{or} \ \ aH\cap bH = \varnothing

  5. aH=bH    a1bHaH=bH \iff a^{-1}b \in H

  6. aH=bH|aH|=|bH|

  7. aH=Ha    H=aHa1aH=Ha \iff H=aHa^{-1}

  8. aHG    aHaH \le G \iff a\in H

証明

1.

HHは部分群なので、恒等元を元として持つ。aHaHaaHHの元を演算して得られる値を元としているからa=aeaHa=ae \in aHであり、aaHa\in aHである。

2.

  • ()(\Longrightarrow)

    aH=HaH=Hと仮定する。そうすると、性質1によってaaH=Ha\in aH=Hである。

  • ()(\Longleftarrow)

    aHa\in Hと仮定する。HHは群なので、演算に閉じている。だから、ahHah\in Hであり、aHaHの任意の元がHHに入るから、aHHaH \subset Hである。同じ理由でa1hHa^{-1}h \in Hから

    h=eh=(aa1)h=a(a1h)aH h=eh=(aa^{-1})h=a(a^{-1}h) \in aH

    となり、HHの任意の元がaHaHに入るから、HaHH \subset aHである。包含関係が両方向に成り立つから、aH=HaH=Hである。

3.

  • ()(\Longrightarrow)

    aH=bHaH=bHと仮定する。性質1によってaaHa\in aHであり、仮定によってabHa \in bHである。

  • ()(\Longleftarrow)

    abHa \in bHと仮定する。すると、a=bha=bhと表せるから、次のように得る。

    aH=(bh)H=b(hH)=bH aH=(bh)H=b(hH)=bH

4.

caHbHc \in aH \cap bHを満たすccが存在するとする。すると、性質3によってcH=aHcH=aHであり、cH=bHcH=bHからaH=bHaH=bHである。逆に、caHbHc \in aH \cap bHを満たすccが存在しないとするならば、aHbH=aH \cap bH = \varnothingである。

5.

  • ()(\Longrightarrow)

    aH=bHaH=bHと仮定する。すると、性質3によってbaHb \in aHであり、b=ahb=ahと表せるから、a1b=a1(ah)=hHa^{-1}b=a^{-1}(ah)=h \in Hである。

  • ()(\Longleftarrow)

    a1bHa^{-1}b \in Hと仮定する。すると、a1b=ha^{-1}b=hであり、b=ahb=ahである。b=ahaHb = ah \in aHであり、性質3によってaH=bHaH=bHである。

6.

関数f:aHbHf : aH \rightarrow bHを考えよう。ahahbhbhに対応させれば、関数ffは全単射となる。だから、aH=bH|aH| = |bH|である。

7.

  • ()(\Longrightarrow)

    aH=HaaH=Haと仮定して、aHaHを再度HH^{\prime}とする。すると、aH=Ha=HaH=Ha=H^{\prime}は明らかで、両辺にaHaHHaHaをそれぞれ代入すると、

    (aH)a1=(Ha)a1=H(aa1)=H (aH)a^{-1}=(Ha)a^{-1}=H(aa^{-1})=H

    から、aHa1=HaHa^{-1}=Hである。

  • ()(\Longleftarrow)

    H=aHa1H=aHa^{-1}と仮定して、同じ方法でHa=aHa1a=aHHa=aHa^{-1}a=aHを得られる。

8.

  • ()(\Longrightarrow)

    aHaHGGの部分群だと仮定すると、eaHe \in aHである。しかし、eHe \in HからaHeHaH \cap eH \ne \varnothingである。性質4によって、aH=eH=HaH=eH=Hを満たす。性質2によって、aHa \in Hである。

  • ()(\Longleftarrow)

    aHa \in Hと仮定する。性質2によって、aH=HaH=Hである。HHGGの部分群なので、aHaHGGの部分群である。

参照する