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行列の指数関数と対数関数 📂行列代数

行列の指数関数と対数関数

定義

指数関数 $\exp$ と 対数関数 $\log$ を 行列 に対して一般化しようとしている。

行列の指数

指数関数を行列に対して一般化した $\exp : \mathbb{C}^{n \times n} \to \mathbb{C}^{n \times n}$ は行列 $A \in \mathbb{C}^{n \times n}$ に対して次のように定義される。 $$ \exp A := \sum_{k=0}^{\infty} \frac{A^{k}}{k!} $$ $\exp A$ は簡単に $e^{A}$ とも表され、$A$ の 行列指数matrix exponential という。

行列の対数

対数関数を行列に対して一般化した $\log : \mathbb{C}^{n \times n} \to \mathbb{C}^{n \times n}$ は $\exp A = B$ を満たす行列 $A$ と $B$ が存在する時に $A$ を $\log B$ と表し、 $A$ を $B$ の 行列対数matrix logarithm という。

定理 1

もし二つの行列 $A, B \in \mathbb{C}^{n \times n}$ が $AB = BA$ を満たせば、次が成立する。 $$ \log AB = \log A + \log B - 2 \pi i \mathcal{U} \left( \log A + \log B \right) $$ 特に $A$ の 固有値 $\mu_{k}$ と $B$ の固有値 $\nu_{k}$ に対して次の系を得られる。 $$ \log AB = \log A + \log B \iff \forall k = 1 , \cdots , n : \arg \mu_{k} + \arg \nu_{k} \in ( - \pi , \pi ] $$ ここで $\arg$ は 複素数の偏角、 $\mathcal{U}$ は次のように定義された 行列アンワインディング関数matrix unwinding function である。 $$ \mathcal{U} (A) := {\frac{ A - \log e^{A} }{ 2 \pi i }} \qquad , A \in \mathbb{C}^{n \times n} $$

解説

行列の指数と対数は 複素数 で定義される指数と対数を形式的に拡張したものである。見ての通り、行列の指数は行列の冪級数を用いて定義される。

エルミートおよび正定値行列の空間において

エルミートおよび正定値行列の空間:

  • エルミート行列の空間: サイズが $n \times n$ の エルミート行列集合 は次のように表される。スカラー体 $\mathbb{R}$ に対して $\mathbb{H}_{n}$ は ベクトル空間 である。 $$ \mathbb{H}_{n} := \left\{ A \in \mathbb{C}^{n \times n} : A = A^{\ast} \right\} $$
  • 正定値行列の集合: サイズが $n \times n$ の 正定値行列 の集合を $\mathbb{P}_{n}$ と表す。 $\mathbb{P}_{n} \subset \mathbb{H}_{n}$ は $\mathbb{H}_{n}$ の 凸錐 である。

すべての行列の空間ではなく、エルミート行列の空間 $\mathbb{H}_{n}$ が定義域で正定値行列の凸錐 $\mathbb{P}_{n}$ が値域である $\exp : \mathbb{H}_{n} \to \mathbb{P}_{n}$ は 全単射 であり、その逆関数は $\log : \mathbb{P}_{n} \to \mathbb{H}_{n}$ である。特にこれらは 微分同型写像 である。

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関連項目


  1. Aprahamian, M., & Higham, N. J. (2014). The matrix unwinding function, with an application to computing the matrix exponential. SIAM Journal on Matrix Analysis and Applications, 35(1), 88-109. https://doi.org/10.1137/130920137 Lemma 3.12 ↩︎