熱力学におけるエントロピーとは何か
定義
次の式を満たすをエントロピーentropyと定義する。
説明
エントロピーは「無秩序さ」を示す物理量で、数式だけ見てなぜ無秩序さを意味するのか理解するのは難しい。「部屋を散らかす」や「コップにインクを落とす」など、非専門家のための説明は「無秩序さ」を説明できてもを説明できない。
この概念を受け入れるためには、エントロピーは導出されたものではなく「定義」であると考える必要がある。「なぜこんなに定義したの?」と思ったら、簡単な視覚的説明が役立つだろう。以下の二つの状況を考えてみよう:
ケース1. システムの温度が低い場合
冷えた空間に熱エネルギーを加えると想像してみよう。これは、低い温度での熱エネルギーの変化を与えることである。このとき、エントロピーの変化をとしよう。
ケース2. システムの温度が高い場合
すでに熱い空間に**ケース1.**と同様に熱エネルギーをさらに加えると想像してみよう。これは、高い温度での熱エネルギーの変化を与えることである。このとき、エントロピーの変化をとしよう。
投入されたエネルギーは熱力学の第二法則に従って、低い温度の場所へ拡散していくだろう。青かった空間**ケース1.は説明し難いような濁った色に変わり、空間ケース2.**は最初より少し赤くなっただけだ。この色の変化の差は、投入されたエネルギーによって空間がどれだけ変わったかの差を示しており、を意味する。数式的に見ればなので、次のようになる。
そうすると、エントロピーの定義によって次の式が自然な結論として分かる。
熱力学的に表せば、「**ケース1.のエントロピーの増加はケース2.**よりも大きい」となる。部屋を散らかすことで表せば、「同じいたずらをしても、散らかっている部屋より整っている部屋の方が散らかりやすい」となる。インクを落とすことで表せば、「同じ量を入れても、濁った水より清水の方が汚れやすい」となる。