気体分子の平均運動エネルギー
📂熱物理学気体分子の平均運動エネルギー
式
温度がTの系での気体分子の平均運動エネルギーは次の通りだ。
⟨EK⟩=23kBT
説明
気体分子一つ一つの運動エネルギーを計算して平均を取るのは非効率的だけでなく、実際には不可能だ。しかし、統計的に導かれたこの式によれば、運動エネルギーは温度のみに依存し、簡単に得られるようになる。定数倍が23というように奇妙に現れる理由は、我々が住んでいる世界を3次元と仮定しているからだ。この直感的理解に基づく方法が導出1で、式的に一発で式を導くのが導出2だ。どちらの方法も本質的には同じことを言っているが、マクスウェル分布の導出過程を理解していればどちらも簡単で、理解していなければどちらも難しいだろう。
導出
上述した通り、導出方法の本質は同じだが、導出1は1次元での結果から3次元の結果を導くことで、3が導出過程でなぜ分母になるかがよく分かる。導出2は3次元で一度に計算する。
導出1
気体分子の質量がmで速度がvならば、運動エネルギーはEK=21mv2で、平均を取ると次の通り。
⟨EK⟩=21m⟨v2⟩
v=(vx,vy,vz)とすると、期待値は線形であるため、次の通り。
⟨v2⟩=⟨vx2+vy2+vz2⟩=⟨vx2⟩+⟨vy2⟩+⟨vz2⟩
気体分子の速度は、x軸に対して次のような確率密度関数が与えられた分布に従う。
g(vx)=2πkBTme−2kBTmvx2
したがって、期待値を計算すると次の通り。
⟨vx2⟩=∫−∞∞vx2g(vx)dvx=mkBT
したがって、3次元について計算すると次の通り。
⟨v2⟩=⟨vx2⟩+⟨vy2⟩+⟨vz2⟩=mkBT+mkBT+mkBT=m3kBT
したがって、運動エネルギーの期待値を求めると次の通り。
⟨EK⟩=21m⟨v2⟩=21mm3kBT=23kBT
■
導出2
気体分子の質量がmで速度がvならば、運動エネルギーはEK=21mv2で、平均を取ると次の通り。
⟨EK⟩=21m⟨v2⟩
気体分子の速度は確率密度関数がf(v)=π4(2kBTm)23v2e−2kBmv2で与えられたマクスウェル分布に従うため、期待値を計算すると次の通り。
⟨v2⟩=∫0∞v2f(v)dv=m3kBT
したがって、平均運動エネルギーは次の通り。
⟨EK⟩=21m⟨v2⟩=21mm3kBT=23kBT
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特に、速度の平方根はvrms:=⟨v2⟩=m3kBTのように表されることを覚えておく。